【死後の手続き】カードと携帯電話に潜む「解約の罠」 携帯の「2段階認証」導入で“定額サービス停止”の手続きがより困難に

AI要約

死後の手続きには多くの落とし穴が潜んでおり、定額サービスの解約もその一つである。

遺族は定額サービスの契約内容を確認し、会員情報を保管しておくことが重要である。

携帯の解約を急ぐと2段階認証で問題が生じる可能性があるため、慎重に進める必要がある。

【死後の手続き】カードと携帯電話に潜む「解約の罠」 携帯の「2段階認証」導入で“定額サービス停止”の手続きがより困難に

 人生後半に待ち受ける最初の難題が、身近な人を見送ることだ。死期に備え、覚悟を持って準備にあたっていても、死後の手続きには多くの落とし穴が待ち受ける。葬儀が終ったと思いきや、残された遺族はすぐに各種手続きに追われることになる。

 基本料金の発生を止めるため、故人のクレジットカードや携帯電話の解約を進めることが一般的だが、ここに落とし穴があるという。一昨年、父を亡くした50代男性E氏が振り返る。

「手続きの過程で厄介だと感じたのが、携帯やカードに関連した定額サービスの解約でした」

 E氏の父は一人暮らし。友達付き合いもなく、もっぱらの楽しみは自宅での映画鑑賞だったという。

「葬儀から半年ほど経ったある日、父宛ての請求書が転送されてきました。契約していた動画配信サービスの未払代金6か月分、約1万円の支払いを求める内容です。父のカードは早い段階で解約していましたが、紐づけられた契約が残っていたのは盲点でした」(E氏)

 代金は直ちに支払ったが、解約手続きに大変な手間を要したという。

「手続きには会員IDやパスワードが必要ですが、私が知るはずもない。運営は外資系企業のようで、電話で問い合わせても音声ガイダンスの対応のみで埒があかず。その後、担当者に掛け合い、死亡証明書のコピーの提出などを条件に手続きを進めましたが、やり取りに数日を要しました」(同前)

 死後の手続きに詳しい税理士で社労士の佐藤正明氏が指摘する。

「動画配信などの定額サービスは会員情報の管理や支払い、各種手続きをネット上で完結することがほとんどです。月に数千円と目立つ金額ではないので、死後も見落とされたまま課金が続いてしまうケースがあります」

 こうした面倒ごとを避けるための対策はあるか。

「親が定額サービスを利用しているか、生前に確認することです。利用している場合はサイト名やIDなどの会員情報を記録し手元に保管しておくのが良いでしょう。無料お試し期間の終了後、本人の自覚がないまま有料契約に移行していることも多く、併せてカードの利用明細も確認しておきたい」(佐藤氏)

 一方で「携帯の解約は早まらないほうがいい」と佐藤氏は注意を促す。

「近年は定額サービスの利用時に、携帯のショートメッセージを用いた『2段階認証』が求められることがある。携帯を解約して認証コードが受信できず、各種手続きがより困難になったというケースが散見されます」

 スマホアプリを使ったサービスにも要注意だ。

「よく確認せずに故人の携帯を解約すると、アプリに記録された会員情報にアクセスできなくなり、手続きが面倒になります」(同前)

 解約できずに支払い続けた料金を取り戻すのは「ほぼ不可能」だと佐藤氏。出費を抑えるための携帯の解約が、思わぬ出費を生む可能性があるのだ。