刃向かった部下を部署ごと消し去る…イーロン・マスク「突然のリストラ宣言」が物語るカリスマ経営者の限界

AI要約

テスラは販売不振と株価低迷に苦しむ中、急速充電器部門をほぼ全体解雇するなど大胆なコストカット策を実施している。

解雇により充電インフラの整備計画に影響が出ており、サイバートラックなど新たな製品の展開にも影響が及ぶ可能性がある。

再雇用の動きも見られるが、目標達成は困難と指摘されている。

■漂流をはじめたテスラはどこへ向かうのか

 販売不振と株価低迷にあえぐ米EVメーカーTeslaは、イーロン・マスクCEOによりさらなる難局に突き当たった。

 マスク氏は4月末、自社の急速充電器「スーパーチャージャー」部門のシニアディレクターと、彼女の下で働いていた約500人を解雇した。ブルームバーグなどが報じた。実質的に部門のほぼ全体が消滅した形だ。

 ロイターは、スーパーチャージャーは2012年にカリフォルニアで初めて導入され、EVの長距離移動を可能にする「ゲームチェンジャー」として評価されてきた、と振り返る。

 しかし、今回の解雇劇により先行きが暗転した。充電ネットワークの拡張計画に大きな打撃を与え、電力会社やアクセスを解放していた他の自動車メーカーとの関係にも悪影響を及ぼしている。

■業績不調によるコストカット策

 米テック・クランチは、解雇の理由はTeslaの売上が急激な成長ペースを維持できておらず、利益が減少しているためだと指摘する。解雇後Teslaは、スーパーチャージャーの新設ペースを遅らせると発表した。今後は、既存サイト(既存区画)の稼働時間の向上および設備のアップグレードに注力するという。

 だが、新設だけでなく、既存設備のアップグレードにも遅れが生じる可能性がある。Teslaは解雇後に生じた不安を打ち消すべく、スーパーチャージャーのネットワーク拡大に今年5億ドル以上を投資すると発表した。しかし、テック・クランチは、チームが解雇されたいま、その目標を達成するのは難しいと指摘する。

 解雇後、Teslaはスーパーチャージャー部門の元従業員の一部を再雇用し始めたが、具体的な人数は明らかにされていない。解雇された従業員の中には、北米の充電部門を統括していたマックス・デ・ゼーヘル氏も含まれていたが、ブルームバーグによると彼は再雇用された模様だ。

■やっとサイバートラックを納車にこぎ着けたのに…

 Teslaは昨年末、受注から4年を経て、EVピックアップトラック「サイバートラック」をやっと納車にこぎ着けた。今回の解雇は、話題のサイバートラックにも多大な影響を与える可能性がある。

 サイバートラックは800ボルトの充電能力を持つが、Teslaの既存のスーパーチャージャーの多くはこれに対応していない。そのため、充電インフラの整備が急務となっていた。

 米EV情報メディアのエレクトレックは、Teslaの新しいV4スーパーチャージャーは800ボルトの高速充電をサポートしているが、これらはまだ限られたスーパーチャージャーサイトにしか設置されていないと指摘する。