五輪でも大問題「のぞき見ドローン」どう防ぐ? なす術なかった海自護衛艦 日本は大丈夫なのか?

AI要約

パリオリンピックでのドローン偵察問題から、軍事利用や民間での問題について考察。

ドローンの違法行為の例や国内外の問題事例を挙げて説明。

現状の防衛態勢と対処策、外国製システムの導入必要性について提言。

五輪でも大問題「のぞき見ドローン」どう防ぐ? なす術なかった海自護衛艦 日本は大丈夫なのか?

 パリオリンピックで「ドローン」による偵察行為が問題になっています。サッカー予選一次リーグA組のカナダ女子代表がドローンを使い、対戦相手の練習を偵察したとして、2024年7月27日、国際サッカー連盟は同チームの勝ち点6を剥奪処分に。同チームは処分の取り消しまたは軽減を求めたものの、スポーツ仲裁裁判所は31日に要求を却下したと発表しています。

 スポーツの国際大会におけるドローンを用いた偵察行為が大々的に問題になったのは今回が初めてですが、軍事の分野では問題行為どころか、地上戦を優位に進める戦法としてドローンが使用されつつあります。

 7月5日付の「Forbes」は、ロシアが7月上旬にウクライナの空軍基地へ偵察用ドローンを侵入させ、そのドローンが収集した情報を基に弾道ミサイル「イスカンデル」で攻撃を加え、ウクライナ空軍の戦闘機や戦闘ヘリを無力化したと報じています。

 具体的に戦闘に大きな影響を与えた例はまだそれほど多くはないものの、国内では5月、海上自衛隊横須賀基地へ停泊していたヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を上空から撮影したと思しき動画が中国のSNSに拡散され、物議をかもした件が記憶に新しいです。

 日本政府は小型無人機等飛行禁止法を施行し、横須賀基地をはじめとする重要施設上空のドローンの飛行を禁じています。しかし、違反に対する罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金という軽微なものですし、そもそも自衛隊警務隊の警察権は平時には民間人に適応できないため、重要施設上空を飛行するドローンの取り締まりは、警察に委ねるしかないというのが現状です。

 有事はもちろん平時においても、正当な理由があれば自衛隊によるドローンの無力化もできなくはないのですが、ドローンの接近を察知するための手段、無力化するための手段ともに、整備は十分とは言えません。

 確かに、航空自衛隊の基地などの重要拠点には、地上にレーダー網が張り巡らされていますが、レーダーは高高度を高速で飛行する航空機やミサイルの察知を主目的に開発されており、低高度を低速で飛行するドローンのような目標の接近の察知や補足には適していません。

 もちろん防衛省・自衛隊も手をこまねいているわけではなく、航空自衛隊のレーダーの一部を、ドローンの接近も察知できるよう改修を進めているという話もありますし、陸上自衛隊の駐屯地などに、ドローンの飛行音を探知して接近を察知するシステムの配備も進めているようです。しかし、前述したようにその数は少なく、能力的にも不足しています。

 アメリカのノースロップ・グラマンは、レーダーや光学・赤外線センサーなどの複数のセンサーを組み合わせて接近してくるドローンなどの目標の接近を早期に察知し、目標情報を高度なAI(人工知能)によって処理するシステム「M-ACE」を実用化しています。これは、必要に応じて機関砲など迎撃用の火器で撃墜し、無力化も行えるものです。

 ほかに、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」も類似機能を備えています。こうした実績のある外国製システムを導入して、重要拠点に配備するくらいのことをしないと、自衛隊がドローンの接近を早期に察知して護りを固める能力を早期に獲得することは、困難なのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。