率直に言う 零細タクシー会社が生き残るためには「乗り合いサービス」「子育て支援」が必須である

AI要約

タクシー業の市場規模は縮小傾向にあり、労働力の高齢化も進んでいる。

国土交通省は過疎地での個人タクシー営業を拡大し、地域のモビリティを守る方針を打ち出している。

少人数の乗り合いタクシーは経済的負担のハードルを下げ、地域の移動手段として有効活用されている事例もある。

率直に言う 零細タクシー会社が生き残るためには「乗り合いサービス」「子育て支援」が必須である

 タクシー業(乗車定員10人以下の自動車による旅客運送業)の市場規模は年間約1兆5000億円である。ただ、バブル経済が終焉を迎えた1990年代初頭以降、市場規模は縮小傾向にある。

 タクシーは少人数の移動に使われるため、運賃は鉄道やバスよりも高い。つまり、

「贅沢品」

なのだ。その一方で、路線バスと同様、人件費が収入の7割を占める

「労働集約型産業」

でもある。簡単にいえば、1万円の収入に対して7000円が

・事務員

・ドライバー

・整備士

の人件費に消えている。タクシー業界は中小・零細企業が多く、2022年度末の日本のタクシー事業者数は1万7236社である。そのうち68.6%は保有車両が10台以下だ。従業員数が10人以下の事業者が

「63.8%」

を占めている。ドライバーの平均年齢も上昇しており、業界全体として、労働力の高齢化が進んでいる。厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」に基づく分析によると、ドライバーの平均年齢は

「約61歳」

である。筆者(北條慶太、交通経済ライター)の取材によると、高齢化は加速しており、企業を中心に80歳を超える従業員もいる。また、国土交通省は2023年、過疎地の住民の移動手段を確保する目的で、同年10月から個人タクシーの営業可能エリアを拡大し、乗合タクシー事業を始めやすくした。

 具体的に、人口30万人以上の都市部が基本だった個人タクシー営業について、過疎地営業も認める方向とした。ドライバーの年齢制限も過疎地は75歳未満から80歳未満に引き上げ、「2024年問題」でバスが撤退するなか、タクシーを有効活用し、地域のモビリティを守る方針を打ち出している。

 タクシーは前述のとおり、鉄道や路線バスに比べれば贅沢品である。しかし、少人数の乗り合いにして、経済的負担のハードルを下げれば話は違ってくる。

 先日、筆者は所用で福井県の敦賀・美浜地区に出かけた。この地域はJR西日本の小浜線沿線で、北陸新幹線延伸の恩恵を受けていない。美浜町内の移動となると路線バスも限られる。そこで美浜町では、乗り合いデマンド交通「チョイソコみはま」の実証実験を開始した。

 予約は、インターネットでは利用予定日の2週間前から30分前まで、電話では利用予定日の1週間前から30分前まで受け付けている。受付時間は8~17時で、1月1日~3日の年末年始のみ休業となる。

 サービスは地元のタクシー会社が運行しており、バンでの送迎となる。現地を訪れた際、JR小浜線の到着時刻に合わせてチョイソコを予約し、到着した列車から乗り継ぐ地元の利用者と、福井鉄道による路線バスの到着時刻に合わせて予約し、チョイソコに乗り換える地元の利用者に話を聞いた。