三菱自動車、2024年度第1四半期決算 販売競争の激化やインフレ影響で営業利益21.3%減の355億円、当期純利益38.5%減の295億円で減収減益

AI要約

三菱自動車工業は2024年度第1四半期の決算を発表。売上高や利益が前年同期比で減少した結果となった。

販売競争の激化やインフレに伴うコスト上昇など、さまざまな要因によりマイナス成績となった。特に各地域での販売台数の変動が影響を及ぼしている。

新型車の展開や商品展開の強化で、今後の業績向上に注力する方針を示している。

三菱自動車、2024年度第1四半期決算 販売競争の激化やインフレ影響で営業利益21.3%減の355億円、当期純利益38.5%減の295億円で減収減益

 三菱自動車工業は7月23日、2024年度第1四半期(2024年4月1日~6月30日)の決算を発表した。

 2024年度第1四半期の売上高は前年同期(6357億5300万円)から1.3%減となる6275億2200万円、営業利益は前年同期(451億5800万円)から21.3%減の355億1900万円、営業利益率は5.7%、当期純利益は前年同期(479億4900万円)から38.5%減の294億6800万円。また、グローバル販売台数は前年同期(19万5000台)から1000台減の19万4000台となった。

■ 販売競争の激化、インフレに伴うコスト上昇などの影響で減収減益

 オンライン開催された決算説明会では、2024年度第1四半期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏が解説。

 自動車産業では半導体などの部品供給不足による生産制約が解消され、在庫車両などが全般的に充足されてきたことから販売競争も以前のような状態に戻りつつあると現状を説明。三菱自動車が注力する地域では、経済回復の遅れの影響で自動車需要が低迷。販売環境が厳しさを増しているとした。

 そのような販売競争の激化、インフレに伴うコストの上昇、一時的な品質関連費用の増加などの影響により、主要項目のすべてでマイナスとなり、減収減益という結果となっている。

 グローバルの販売台数では、2023年度に実施した構造改革の影響で中国市場が大幅減となっているが、欧州、日本、豪州・ニュージーランドなどの販売増で影響を打ち消している。

 市場別の販売状況については、アセアン・オセアニア地域では、アセアンのタイ、インドネシア、マレーシアで販売減となったが、フィリピン、ベトナムで販売を伸ばして台数を維持。オセアニアでは、主要市場の豪州で車両供給のキャッチアップ効果などの発揮で販売台数を30%以上伸長。6月から新型「トライトン」の販売が本格化していることで、引き続き販売強化を図っている。

 中南米・中東アフリカ地域では、中南米で新型「L200 トライトン」「アウトランダー スポーツ」の投入をてことして販売台数を拡大。堅調な販売モメンタムを維持し、販売台数増に努めていくとした。

 中東では紛争の影響が出ている地域があるものの、自動車需要はおおむね前年同等を維持しており、新型モデル投入に向けた在庫圧縮の影響で販売が落ち込んだ「L200」の影響を、「エクスパンダー」「アウトランダー」などの好調なモデルで補い、販売台数の維持を実現している。

 アフリカでは高金利やインフレの影響で自動車需要が低迷。三菱自動車でも販売に影響を受けたが、今後の発売を予定する新型車の効果で販売台数の底上げを図っていくという。

 日本市場では「デリカミニ」が好調で販売台数が増加。今後は「アウトランダーPHEV」やデリカミニの特別仕様車の投入に加え、好評を得ているトライトンの販売増を推進していく。

 北米市場では米国やカナダの高金利、インフレなどの影響で市況が悪化。しかし、三菱自動車では引き続き値引きなどを行なうことなく、販売の質を向上させる取り組みを維持している。また、6月に発生したディーラー用ITシステムに対するサイバー攻撃が、取り引きしているディーラーの3分の1で販売オペレーションに大きく影響を与えたこともあり、販売台数の減少という結果となった。今後はターゲットを絞ったインセンティブプログラムの強化、アウトランダー、アウトランダーPHEVの販売モメンタムを軸として販売増につなげていくという。

 欧州市場では依然として販売競争が厳しいが、ルノーからOEM供給される「ASX」「コルト」が販売に寄与して台数増を実現。新型ASXの拡販施策を行ない、年後半に予定する新型アウトランダーPHEVの市場投入に備えるとした。

 営業利益の変動要因では、「販売台数」で一部地域における船腹到着遅延、在庫調整などの影響で卸売り台数が減少して120億円の減益、「販売費」では市場競争環境の激化に伴い、主に米国やタイで販売対策金が上昇したことを主因として94億円の減益、「その他」ではインフレによる人件費や一般経費の増加、品質関連費用の増加で107億円の減益などを計上。一方、「資材費/輸送費」で20億円、「為替」の米ドルや主要通貨の影響で246億円の増益要因が出ているという。

 通期の業績見通しでは、為替前提にある程度の余裕があると想定しつつ、不透明なマクロ環境、販売競争のさらなる激化が予想されることなどを踏まえ、期初発表の見通し内容を据え置きとしている。

■ 新型アウトランダーPHEVを2024年末から欧州でも生産開始

 第1四半期のビジネスハイライトでは、2023年度に市場投入した新型トライトン、新型エクスフォースの販売が本格化。アセアン各国や中南米、中東諸国などで販売がスタートして、「三菱自動車らしさ」を具現化したモデルとして各国のユーザーから好評を得ている。さらに第2四半期以降にも、中東、アフリカの市場で展開を拡大。着実な商品展開によってさらなるブランドの浸透、販売の強化につなげていく。

 今後の展開では、新型アウトランダーPHEVを10月1日にスペイン・マドリードで一般公開し、2024年末から生産を開始して、ASX、コルトに続く刷新されたラインアップモデルとして欧州市場で販売を行なうことを発表した。

 プレゼンテーションの最後に松岡CFOは、「この第1四半期はタイを中心としたアセアン市場の販売弱含み長期化、半導体に起因する部品供給不足の解消による競争環境の正常化といった当社を取り巻く環境は厳しさを増していた一方、新型トライトン、新型エクスフォースはアセアンからグローバル市場に順次展開を進めてきました。今後はこれらの販売を本格化させていくと同時に、他地域への展開も計画に沿って進めてまいります」。

「世界的な高インフレの波はようやくピークアウトしたようにも見受けられますが、今後も地政学的リスクの高まり、11月に控えている米国大統領選などの重要選挙も控えており、先行きの予想は極めて難しい状況が続きます。舵取りが難し状況は続きますが、新型車の展開を着実に実施して、期初に掲げたさまざまなパートナーシップを通じた各地域事業の強化、新ビジネス領域、新事業形態へのチャレンジなどの取り組みを加速させることに注力してまいります」と今後に向けてコメントした。

■ 質疑応答

 後半に行なわれた質疑応答では、営業利益の増減要因の詳細についての質問に対して松岡CFOが回答。「卸売りの出荷台数が前年よりも少し少ないところと、販売費用が増加したところでしっかりとした数字が出なかったところがまず要因としてあります。卸売りの面では、実は欧州市場で法規対応というところで前年度に一定程度を製造してディーラーに出荷を済ませている台数がインパクトとして大きい部分があります。この反動として今年度に卸売りが出ていない形ですが、小売りという部分では順調に推移しています。これが少し特殊な要因として存在しています」。

「それ以外では、アセアンのタイやインドネシアを中心に、全体の需要が落ち込んでいます。これによって台数が思ったように伸びていません。しかし、ここも小売りという部分では一定程度のシェア拡大をできていますので、Q2以降に順調に卸売りが出れば挽回できると考えています」。

「北米については競争環境も厳しくなり、台数が伸び悩んでいる部分もあります。販売費用などをしっかりとコントロールして販売台数を挽回し、伸ばしていくこともできるのではないかと考えています。販売費用について前年度よりも増えているのは、一番大きいのが米国で、続いてはタイ、豪州でも一部販売費用の増加が見受けられます。ただ、私どもは闇雲に販売費用を使うということではなく、相対的に見たところでは抑えて販売費用をコントロールしていくということで、適切に販売対策金を使っていくという方向で進めていきたいと考えています」と回答した。

 また、アセアン市場でのBEV(バッテリ電気自動車)とHEV(ハイブリッドカー)の販売状況についての質問には、三菱自動車工業 代表執行役副社長(営業担当)中村達夫氏が回答した。

 中村副社長は「BEVはタイをはじめとした市場で踊り場状況にあると考えており、逆にHEVはタイで言えば20~22%、BEVは10%前後という形で逆転している状況です。HEVに関しては、インドネシアでは『ラグジュアリータックス』という課税が免除されて少し安くする制度もあり、ラグジュアリータックスがかかるモデルについてはHEVが増えている状況です。タイやインドネシアでは今後もHEVのニーズが高くなっていくだろうと考えております。当社でも2月にエクスパンダーのHEVモデルを導入して非常に好評を得ております。中期経営計画でも発表しているように、来年には次のモデルでHEVを出していく予定ですので、タイやインドネシアなどにおけるHEV需要をしっかり取り込んでいきたいと思っております」。

「また、タイでは燃費が非常に重視されており、HEVの実用性という面も評価されております。タイと、インドネシアでもそうですが、HEVは車両価格が高いので、各社とも最上級類別にHEVを設定していて、燃費重視、実用性重視といいながら、実際にはかなりスポーティなモデル、ラグジュアリーな最先端のモデルとして売れており、私どももそのように販売している部分があります」と解説している。