ダンロップの次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」発表会 「これは進化ではなく発明」と山本悟社長

AI要約

ダンロップが次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を発表。アクティブトレッド技術を搭載し、全天候に対応。ユーザーに安心感とストレスフリーな移動体験を提供する。

シンクロウェザーは価格が最高位で、販売は認定店制度を導入。15〜20インチの全100サイズの展開を予定し、日本初のアイスグリップシンボルを刻印。メジャーリーガーの大谷翔平選手を起用したプロモーションも展開。

商品コンセプトは「夏も冬もより安心、ストレスフリーな新基準タイヤ」。道路状況や気候に左右されない移動が可能で、環境にやさしい点も評価されている。

ダンロップの次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」発表会 「これは進化ではなく発明」と山本悟社長

■ 今までのタイヤの常識を覆すことを目標に開発

 ダンロップ(住友ゴム)は7月22日、次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」の発表会を都内で実施した。登壇したのは、住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏、代表取締役専務執行役員 西口豪一氏、執行役員 タイヤ国内事業本部 国内リプレイス営業本部長 兼 株式会社ダンロップタイヤ 代表取締役社長 河瀬二朗氏、執行役員 タイヤ事業本部 材料開発本部長 水野洋一氏、執行役員 タイヤ事業本部 技術本部 副本部長 田中進氏の5名。

 登壇した代表取締役社長の山本は、ダンロップのブランドムービーに触れ、「ダンロップブランドの物語は、ジョン・ボイド・ダンロップという獣医師が、息子のためにタイヤを作ったことからスタートしました。息子への愛情が生み出した1本タイヤは、今からさかのぼること136年、世界で初めて空気入りタイヤを発明し、ダンロップはタイヤ産業のパイオニアとして本日まで歩んでまいりました。

 136年という歴史の中で、国産第1号タイヤを始め、ハイドロプレーニング現象の解明や、100%石油外天然資源タイヤなど、さまざまな世界初や日本初の技術、商品を世に送り出してきました。子供が乗る自転車をもっと快適にするにはどうすればいいんだろう? 何ができるだろうか? 人を想う心、誰かの役に立ちたいという優しさから生み出されたブランドがダンロップです。100年以上経過した今も、私たちは変わらぬ思いで商品やサービスの開発を続けています。

 こんなものがあったらいいな、こんなことができたらいいな、今までもそうだったように、これからも人の創造を1つずつ形にしていくという熱意を、ブランドムービーの中で「想像を追い抜け」という言葉で表現をいたしました」とあいさつ。

 続けて山本氏は、「タイヤは環境に合わせて履き替える。これが今までの常識でした。この常識を覆せないか? このようなことを考え、悩み、研究開発を続けてまいりました。しかし、今までの延長線上に答えを見つけることはできませんでした。このような状況の中、大きく発想を転換し、そもそも滑る原因である水や氷を味方につけることはできないか? タイヤの今までの常識に挑み、それを覆すことができたら、ユーザーに、より豊かなモビリティライフを提供できると考えました。そのような思いから試行錯誤を重ね、生まれた技術がアクティブトレッドです。

 そして、この技術の一部を初めて搭載したタイヤがシンクロウェザーで、あらゆる路面、あらゆる天候にタイヤが能動的にアジャストし、生活者の日常をより豊かにしていくことを願い命名しました。シンクロウェザーは、“次世代オールシーズンタイヤ”と位置づけ、現在販売しているオールシーズンMAXXの後継品ではありません。まったく異なる基準を持った新ジャンルとして発売します。

 シンクロウェザーは、まさに未来を切り開くイノベーションです。数々の世界初を生み出してきたダンロップが、また1つ新たな価値をお届けします。これは進化ではなく発明です。アメーバのように変化するゴムが、新たな体験価値を生み出します。このタイヤが今後の自動車用タイヤの概念を大きく変えると信じています」と締めくくった。

■ シンクロウェザーに搭載されたアクティブトレッド技術とは

 続いて、住友ゴム工業 執行役員 タイヤ事業本部 技術本部 副本部長の田中進氏が、シンクロウェザーの商品特徴と採用技術の説明を行なった。

 田中氏は、「サマータイヤは、大きなブロックと剛性感のあるしっかりとしたゴムが、ドライ・ウェット路面をしっかりととらえて密着することでグリップするが、氷上ではゴムが硬くなり、路面に密着できず滑って危険。一方スタッドレスタイヤは、小さなブロックに加えて、細かい溝と柔らかいゴムが氷に密着してグリップ。また雪上では深い溝が雪をつかみグリップするほか、ドライ・ウェットではゴムが柔らかくなりすぎて、ブロックがよれて路面をとらえきれず、グリップが低くなる」と、サマータイヤとスタッドレスタイヤのそれぞれの特徴を紹介。

 加えて田中氏は、「これは100年以上におよぶ自動車用タイヤの技術開発における常識と考えられており、タイヤは天候や路面状態に応じてゴムとパターン形状が専用設計され、時期に合わせてタイヤを履き替える必要があった」と説明した。

 そこでダンロップは、この常識の壁に挑み、水や温度といった外部環境の変化に反応して、ゴムの性質がスイッチを切り替えるように自動的に変化する、まったく新しいゴム“アクティブトレッド”を発明したとしている。

 新技術アクティブトレッドについて田中氏は、「ゴムをナノスケールで眺めると、さまざまな材料が混ざり合っていて、特に主要成分であるポリマーの動きがタイヤのグリップと深く関係します。ポリマーが動きやすい状態だと、ゴムも柔らかくなり路面にグリップします。反対にポリマーが動きにくいとゴムは柔らかさを失い、路面にグリップしづらくなります。ポリマーの動きやすさは、気温や外部環境やポリマー間の結合が影響しますが、アクティブトレッドでは、ゴムの中に環境変化に反応する“温度スイッチ”と“水スイッチ”の2つを組み込むことで、ポリマーの動きをコントロールすることに成功。ドライ・ウェット・氷上路面といったあらゆる路面で高い性能を発揮する、これまでにないゴムを作り出しました」とアクティブトレッドの特徴を紹介した。

 また、温度スイッチについて田中氏は、「温度スイッチを組み込むことで、常温ではサマータイヤと同様の剛性感を持ちながら、氷上では柔らかくグリップするゴムにできます。通常サマータイヤのゴムは、ウェットグリップに効くグリップ成分がポリマーと一体になっていますが、このグリップ成分は低温時に硬くなりやすく、ポリマーが動きづらくなり、ゴムが硬くなる原因となります。温度スイッチ搭載ポリマーは、このグリップ成分の一部をポリマーから切り離しても機能する材料に置き換える新発想で、低温でもポリマーが動きやすく、氷上でも柔らかさを維持できます」と解説。

 もう1つの水スイッチに関しては、「水スイッチを組み込むことで、水に触れたゴム表面が柔らかくなり、ウェット路面でグリップを向上できます。従来タイヤのポリマー間は強固な“共有結合”で結ばれていますが、シンクロウェザーは水スイッチとして、この部分を水で脱着できる“イオン結合”に置き換え、水に触れたときだけポリマー間の結合がほどけ、ゴムが柔らかくなることでウェットグリップを向上できます。そして、乾燥するとポリマー間が再結合することでゴムの剛性感も復活し、サマータイヤ同等の性能になります」と説明した。

 加えて、従来のオールシーズンタイヤでユーザーが気にしていたという静粛性能と摩耗能について田中氏は、「V字型方向性パターンは、雪をつかむ性能や排水性が優位な一方で、走行ノイズに課題がありました。走行ノイズはタイヤが回転する際に、ブロックが路面を叩いたり、溝の中の空気が圧縮開放することで発生します。ブロックの形状とその配列、並び方によってノイズの周波数と音圧は決まりますが、同じ形状が連続すると特定の周波数が強くなり、うるさく感じられます」と説明。

 続けて、「そこでシンクロウェザーでは、“ノイズ低減Vシェイプパターン”を新たに開発。形状の異なる2種類のブロックをデザインし、さらに周上の配列をランダムかつ最適な並び方にすることで、タイヤから発生する周波数と音圧をコントロールして、サマータイヤレベルに快適で静かなタイヤにしています。今回、最新のノイズシミュレーション技術を活用することで、このようなパターン開発をすることができました」と新開発のトレッドパターンであると紹介した。日本自動車タイヤ協会が定めている低車外音タイヤの業界自主基準も満たしているという。

 また、ユーザーが気にするという摩耗性能についても、「タイヤの摩耗は、消しゴムが削れる原理と同じイメージですが、押し付けられた部分が滑ることで、タイヤは摩耗します。タイヤの接地面内で接地圧の高い部分があると、その部分の摩耗が早まるが、シンクロウェザーでは、摩耗予測シミュレーションを活用し、溝の角度・深さ、サイプなどパターンデザインを最適化させ、接地面全体を均一に仕事をさせることで、摩耗量を少なくした結果、摩耗性能はサマータイヤ同等以上になっています」と解説した。

 最後に田中氏は、「サマータイヤはドライ・ウェット路面が得意ですが、氷上・雪上・シャーベット路面などは走行できません。また、スタッドレスタイヤは、氷上・雪上・シャーベット路面が得意ですが、ドライやウェット路面は走行可能ですが、他のカテゴリーのタイヤに比べると苦手なポジションになります。そして従来のオールシーズンタイヤは、カバーする領域は広いですが、氷上路面だけは走行が推奨できません。これが技術面、販売面でも大きな課題となっています。唯一、氷上路面を含めすべての路面に対応するのがシンクロウェザーであり、ダンロップが自信を持って送り出す次世代タイヤとなります」と新製品の優位性をアピールした。

 なお、シンクロウェザーには、従来から冬タイヤに幅広く刻印されている「スノーフレークマーク」だけでなく、今回新たに国連規定で定められた氷上性能の基準をクリアした証となる「アイスグリップシンボル」も刻印されていて、田中氏は、「当社調べですが、アイスグリップシンボルを刻印したオールシーズンタイヤは世界初となります」とシンクロウェザーの特徴をまとめた。

■ 商品コンセプトとは「夏も冬もより安心、ストレスフリーな新基準タイヤ」

 続いて住友ゴム工業 執行役員 タイヤ国内事業本部 国内リプレイス営業本部長 兼 ダンロップタイヤ 代表取締役社長 河瀬二朗氏がマーケティングに関しての説明を実施。

 河瀬氏は、「タイヤはクルマを買えば普通に装着されているもので、いつでも機能して、走れることが当たり前のもの……。私もそうですが多くの一般ドライバーさんもそう思っているのではないでしょうか?」と問題提起からスタート。

 続けて今年2月の東京都内の積雪について触れ、「交差点で動けなくなったクルマ、タクシーを待つ長蛇の列、その日の予定をキャンセルして外出を諦めた……。実は1年を通じて何度か見る光景ですし、ほぼ毎年見る光景でもあります。それなのに関東以西の都市部では、年に1度のことなので、すぐに忘れてしまうのも事実。しかし、それが大切な人との約束の日だったら、お子さんの成人式だったら、受験日だったら、楽しみにしていた家族とのドライブ旅行の日だったら……。シンクロウェザーの体験価値の1つは、天候を気にしない安心感です。時期や天候によっては、今まで行くことをためらっていた場所にもどんどん訪れてほしいです」と言及するとともに、シンクロウェザーの商品コンセプトが、“夏も冬もより安心、ストレスフリーな新基準タイヤ”であると説明した。

 また、シンクロウェザーのある生活で得られる価値は移動体験だけでなく、夏タイヤと冬タイヤの履き替えが不要になることで、その作業時間などを有効に使えるようになりタイパが高いこと。販売店も春と冬に集中するタイヤ交換の繁忙時期を分散でき、ピットの効率的な運用にも貢献できるほか、廃棄タイヤの本数も削減できることで環境負荷の軽減などにも貢献できると説明。

■ 価格はダンロップの中で最高位で、販売は認定店制度を導入

 サイズラインアップは、最終的には15~20インチまで全100サイズ以上を予定しているが、まず2024年度には15~19インチの40サイズを10月1日に発売し、20インチ以上は2025年年初から順次発売となる。

 また販売価格は、従来はすべてオープンプライスだったが、シンクロウェザーについては、メーカー希望小売価格を設定するほか、ダンロップの販売商品の中でも最高位の価格帯として設定するという。

 併せて、販売店についても河瀬氏は、「商品特性や技術知識、個々のユーザーのクルマやタイヤの使い方をしっかりと理解したうえで、シンクロウェザーを紹介・説明できるスタッフのいる店舗に限定する」といい、販売店のスタッフは勉強会に参加したのち、認定試験を受け、合格したスタッフのいる店舗のみシンクロウェザーを取り扱うことができる“販売店認定制度”を導入するとしている。

■ 「二刀流」メジャーリーガー「大谷翔平選手」をプロモーションに起用

 発表会の最後に、シンクロウェザーの広告塔として、「二刀流」メジャーリーガー「大谷翔平選手」を起用することを発表。

 大谷選手はビデオメッセージで、「今回の発表する新商品は、あらゆる環境にシンクロし、夏でも冬でも同じタイヤで走れる、今までの想像を追い抜くタイヤで、僕の代名詞である二刀流や、新しい環境に挑戦している僕と合っているなと感じます。カリフォルニアでは冬に向けて雨も多く、さまざまな天候があるので、これ1本あればどんな天候も気にせず、どこにでも行けると伺っています。非常に楽しみにしています。今シーズンも残り少ないですが、長い目で見ても二刀流にこだわって活躍していきたいなと思っています。ぜひシンクロウェザーとともに、ダンロップファミリーとして一緒に盛り上げていきたいなと思っています」とコメントを寄せた。

 また、大谷選手が「野球の象徴」と評するベーブ・ルース選手との共演動画も放送された。