「キダルト」が支える玩具市場 少子化でも成長続く【けいざい百景】

AI要約

玩具市場は少子化の逆風にも関わらず、成長を続けており、大人の需要が支えている。

日本の玩具市場規模は過去最高の1兆193億円を記録し、特にトレーディングカードやぬいぐるみなどが人気を集めている。

大人向けのおもちゃ市場である"キダルト"は世界的に注目されており、日本でも着実に成長している。

「キダルト」が支える玩具市場 少子化でも成長続く【けいざい百景】

 少子化の逆風が吹く玩具市場が、成長を続けている。支えているのは大人の需要だ。子供心を持った大人層を示す、キッズ(kid)とアダルト(adult)をかけた造語「キダルト(kidult)」の市場は世界的に注目されているといい、メーカーや玩具店も経済力があるキダルトを意識した商品開発や売り場作りに取り組んでいる。(経済部 佐藤快哉)

 日本玩具協会によると、2023年度の国内玩具市場規模(希望小売価格ベース)は前年度比7.1%増の1兆193億円と、初めて1兆円を突破した。0~15歳人口は減り続け、23年度は2.3%減の1417万人だったのと対照的に、市場全体は4年連続で伸びた。

 けん引したのは「ポケモンカード」などの「カードゲーム・トレーディングカード(トレカ)」だ。転売目的の買い占めや、販売店への強盗など社会問題にもなったトレカだが、親子で遊んだり、大人同士で対戦したりと、実需での大人の購入も多い。23年度は18.1%増の2774億円と、トレカが市場全体の4分の1を占めた。

 他にも、「ぬいぐるみ」が20.7%、ミニカーやレールトイなどの「のりもの玩具」が8.9%、プラモデルやフィギュアなどの「ホビー」が4.7%それぞれ増加した。いずれもキダルト層にも人気の商品を抱えている。

 おもちゃ業界の専門誌「月刊トイジャーナル」の藤井大祐編集長によると、これまでも「ハイターゲット層」といったくくりで、大人の玩具需要は注目されていたが、「特にここ2~3年で『キダルト』が世界的に使われるようになった」ことで、玩具市場のジャンルとして注目が高まった。日本同様に少子化が進む先進国でもキダルトは大きな市場になりつつあるという。

 4月に都内で開かれた玩具業界の商談会「おもちゃビジネスフェア」。イベント企画の「おもちゃ屋が選んだ今年売れるおもちゃ」のキダルト部門では、バンダイの「Original Tamagotchiシリーズ」が投票で1位に選ばれた。たまごっちの登場は1996年で、当時の10代はすでに親の世代に。「売り場で見つけて懐かしい気持ちでご購入いただき、自分の子どもにもたまごっちを買い与える流れができている」(バンダイ)。

 2位は、エポック社の「シルバニアファミリー 赤ちゃんコレクション―赤ちゃんケーキパーティーシリーズ―Pack」。シルバニアファミリーはユートピアな世界観やかわいさが大人の女性に受けており、職場のデスクを飾ったり、ジオラマを作って写真をSNSにアップしたりして楽しんでいるという。

 「トミカプレミアムRacing レイブリック NSX―GT」(タカラトミー)なども入賞した。大人のためのトミカとして15年に誕生したトミカプレミアムは、細部まで再現したクオリティーが特長で、シリーズ累計1500万台以上が売れた。狙い通り、ユーザーの約60%を大人が占めている。

 藤井さんは「かつてと異なり、今は大人も抵抗なくアニメやマンガを楽しむようになっている。キャラクターが好きだから、おもちゃを買うという流れが自然に生まれている」と指摘する。特にロングセラーブランドは、子どもの頃に親しんだ懐かしさもあって、キダルト層に受け入れられている。