日立やパナソニックも注目のCO2見える化大手のゼロボード。Google AI集団ルーツのESGベンチャー事業を買収

AI要約

CO2見える化業界でM&Aの動きが活発化し、ゼロボードがDataseedとの事業譲渡契約を締結した。

ゼロボードとDataseedの統合により、ESG関連ソリューションの全領域を網羅し、データサイエンスを活用した情報開示に取り組むことが期待されている。

サステナビリティ領域でスピード感を持った成長を目指し、今後はスタートアップ同士の合従連衡が進む可能性が高い。

日立やパナソニックも注目のCO2見える化大手のゼロボード。Google AI集団ルーツのESGベンチャー事業を買収

大小ひしめく「CO2見える化」業界で、M&Aの動きが活発化している。

CO2見える化大手のゼロボードは7月1日、ESG経営高度化サービスを手掛けるスタートアップ、Dataseed(データシード)との間で、ESGデータ収集・分析・改善支援ソリューション「Dataseed」事業に関する事業譲渡契約を締結し、同日譲受が完了したと発表した。

ゼロボードは自動車大手をはじめとする製造業や建設業に強く、業界大手を起点にその取引先も含めた広範囲なサプライチェーンにサービスを提供する戦略で業績を拡大してきた。導入事例や協力事例には、日立やパナソニック、ソフトバンクなどそうそうたる企業が並ぶ。

一方のDataseedは2022年、GoogleのAI集団「Google DeepMind」出身者が設立したサステナビリティ領域のAIスタートアップ「Recursive(リカーシブ)」からスピンアウト。中長期的なESG経営戦略のためのデータマネジメントや分析・改善支援を行ってきた。

CO2見える化業界では大手アスエネもM&Aの積極展開を予定しており、今後、合従連衡も含めた動きが本格化しそうだ。

今回の事業買収の狙いについて、ゼロボードCEOの渡慶次道隆氏は次のように語る。

「いまはGHG排出量(温室効果ガス排出量)のデータを効率的に収集してほしいというニーズが中心だが、本質的には(収集したデータを)企業価値の向上にどうつなげていくかが極めて重要。そのためには開示を目的としたデータではなく、改善に必要なデータ収集や分析・支援が必要になってくる。

その意味で、ESG情報の収集・分析で業界をリードするデータシードの事業により、(今後出てくるであろう)お客さまのニーズに素早く対応できることが非常に大きい」(渡慶次氏)

今回のM&Aでは、人材獲得を主な目的とするアクハイアリングにより、データサイエンスの専門人材など、データシードの全社員がゼロボードに加わることになる。データシード社CEOの福田匡史氏が、新設のデータシード本部を率いる。

企業価値の評価指標をめぐってはここ数年、コーポレートガバナンス・コードの改訂、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示義務づけなど、非財務情報の重要性が高まっている。特に、今後はGHG排出量など環境(E)に関するものだけでなく、ソーシャル(S:社会)、ガバナンス(G:企業統治)も含めたESG全体の情報が企業価値の向上に大きな役割を果たす。

ゼロボードは顧客ニーズのあるESGの「E」に関してはもともと強みを持っていた。ただ、残る「S」と「G」の開発は後回しになっていたのが現状だった。データシードの事業譲渡により、今後ニーズが顕在化するであろうESG関連ソリューションを全て網羅できるようになる。加えて、ESG全領域で収集した情報をもとにしたデータサイエンスによる顧客課題の分析など、情報開示の「先」の取り組みを進めていく。

まさに、ゼロボードの既存事業を補完するM&A。渡慶次氏は、専門領域が多様化しているサステナビリティ領域でスピード感を持った成長をしていくうえでは、今後それぞれの領域に特化したスタートアップ間などで「合従連衡が進んでいくのではないか」と指摘する。