EU、新たな共同債発行構想が頓挫か-フランス混乱でドイツ押し切る

AI要約

欧州連合(EU)は防衛などの重要プロジェクトの資金源とするための新しい共同債発行計画が阻止されつつある。

EU首脳は共同債の代わりに中国や米国との貿易摩擦、ロシアのプーチン大統領、トランプ前米大統領などに対抗できる戦略を模索している。

共同債に対する期待は極右勢力の躍進や投資家の関心低下により打撃を受けている。

EU、新たな共同債発行構想が頓挫か-フランス混乱でドイツ押し切る

(ブルームバーグ): 欧州連合(EU)では防衛など重要なプロジェクトの資金源とするため新たな共同債を発行する構想が浮上していたが、反対するドイツなどが計画阻止に成功しつつある様子だ。

事情を知る関係者によると、EU加盟国首脳が今後5年間の最優先課題を協議する27日のサミットで、いわゆる防衛債は議題とならない公算が大きい。共同債の議論をつぶそうとする動きはフランスの混乱にも助けられたと、私的な会話だとして匿名を要請した関係者は述べた。

EU首脳が合意に取り組んでいるのは、中国や米国との貿易摩擦、ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領、トランプ前米大統領がホワイトハウスに返り咲く可能性に対抗できる戦略だ。同時に、経済成長と脱炭素を促進する方法を探っているEUでは、共同債発行が一つの解決策として挙がっていた。

だが、こうした熱い期待は今月の欧州議会選挙でプーチン氏に友好的で気候変動対策に懐疑的な極右集団の躍進により、冷や水を浴びせられた。

今回の首脳会談で、フォンデアライエン欧州委員長は2期目の指名を受ける見通しだが、政治的な状況から共同債のような議論の分かれる案を推進することには慎重になりそうだ。欧州議会選のわずか数日後にMSCIがEUとして共同発行した既発債を政府債インデックスに加えないと決定し、共同債に対する投資家の意欲も減退した。

ブルームバーグが確認したEU戦略文書の草案では、EUは防衛費増額の財源に「革新的な選択肢」を活用し、他国と競争できるよう「大規模な集団的投資努力」を必要としているとうたっているが、共同債への言及はない。

数週間以内にEUの競争力強化について報告書を発表するイタリアのドラギ前首相は、長きにわたる共同債の支持者だ。だが、ドラギ氏ですらその報告に共同債への言及を盛り込むか疑問符が付くと、同氏に近い関係者は語った。

かつてはタブー視されていたEU共同債だったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの復興目的として、初めて大規模な発行が首脳間で2020年に合意された。