482億円相当が不正流出したDMMビットコインは氷山の一角、なぜ暗号資産取引所で流出事件が相次ぐのか?

AI要約

暗号資産取引所での不正流出事件が相次ぎ、原因として技術的脆弱性やガバナンスの欠如が挙げられる。

過去の事例からも安全対策の重要性が浮き彫りになり、DMMビットコインの事件は未だ対策が不十分とされている。

海外でも大規模な不正流出事件が続き、取引所のセキュリティ強化が喫緊の課題となっている。

 今年5月、DMMビットコインで約482億円に相当する暗号資産が不正流出した。

 この手の事件は国内外で相次いでいるが、暗号資産で不正流出が続くのはなぜか。

 その背景には、技術的な脆弱性に加えて、ガバナンスの欠如と法規制の遅れがある。

 (小林 啓倫:経営コンサルタント)

■ DMMビットコインで起きた巨額の流出事件

 今年5月31日、大手メディアグループDMM.comの傘下で、暗号資産交換業(暗号資産取引所)を営むDMMビットコイン社が、同社の管理するウォレットから、約482億円に相当する量の暗号通貨(仮想通貨)「ビットコイン」が不正流出したと発表した。

 ウォレットとは、暗号資産を安全に保管するためにデジタル技術で構築された場所のことだ。

 この中には取引所を利用する顧客から預かっているものも含まれ、同社は6月に入るとすぐ、増資などで550億円を調達することを発表。それによって流出した顧客資金の補填を行う方針を打ち出すなど、市場の不安を打ち消すことに躍起だ。

 今回の事件の原因について、DMMビットコインは調査中としており、この原稿を執筆している時点では公式な見解は示されていない。ただ一部の専門家からは、ハッキングによる不正流出ではないかとの指摘が挙がっており、仮にハッキングの場合、被害額において史上7番目の規模となるとの報道も出ている。

 ◎ビットコイン482億円が不正流出、DMMビットコイン「全額保証」(Bloomberg)

 暗号通貨の流出事件は、これまで何度も発生している。ちょうど10年前の2014年、当時世界最大級だった暗号資産取引所「マウントゴックス」から、市場価格で約480億円分のビットコインが流出する事件が起きた。

 その4年後の2018年には、暗号資産取引所「コインチェック」から、約580億円分の暗号資産が流出している。

 いずれも原因はハッキングとされており、暗号資産取引所の管理態勢について疑問が投げかけられることとなった。今回のDMMビットコインの事件は、まだ十分な対策が実現されていないことを浮き彫りにしている。

 海外の暗号資産取引所に目を向けても、巨額の不正流出事件が相次いでいる。

 2021年8月、Poly Networkという取引所のシステムに存在していた脆弱性が悪用され、約6億1100万ドル(約960億円)相当の暗号資産が持ち去られた(ただこの事件では、犯行に及んだハッカーが「攻撃が可能かどうか確認することが目的だった」として、盗んだ暗号資産をすべて返却している)。

 また2022年3月には、北朝鮮のハッキンググループと見られる犯罪者たちが、ゲームに特化した取引所のRonin Networkを攻撃。約6億1500万ドル(約965億円)相当の暗号資産を盗み出すことに成功している。

 なぜ暗号資産取引所で不正流出が相次ぐのか。その原因として挙げられているものを見ていこう。