JALはなぜインド最大インディゴと組むのか 特集・レゲット常務に聞く「品質高い」LCCの実力

AI要約

日本航空(JAL)が、インド最大の航空会社インディゴとのコードシェアを始めることを発表。インディゴはLCCであり、JALとの提携はインド市場で新たなパートナーを求める必要があった結果。

インディゴは定時性の高いLCCであり、JALが組む上での魅力があると評価されている。ビジネスクラスのサービスも提供し、運航品質が高いことが査定されている。

インディゴは長距離路線への投入を視野に入れており、CEOのピーター・エルバース氏の就任以降、より積極的な戦略を打ち出している。

JALはなぜインド最大インディゴと組むのか 特集・レゲット常務に聞く「品質高い」LCCの実力

 日本航空(JAL/JL、9201)が、インド最大の航空会社インディゴ(IGO/6E)とのコードシェア(共同運航)を10月から始めると発表した。インドでの国内線シェアは6割以上と圧倒的で、発注済みのエアバス機は1300機を超える世界最大のA320ファミリーの顧客でもある。

 JALは2017年9月に、当時インド3位で印タタ・サンズとシンガポール航空(SIA/SQ)の合弁会社ビスタラと提携。2019年2月28日からコードシェアを始めたものの、エア・インディア(AIC/AI)による吸収合併が決まり、インド市場で新たなパートナーと提携する必要があった。

 ビスタラはFSC(フルサービス航空会社)だったが、今回組むインディゴはLCC(低コスト航空会社)だ。FSCであるJALにとって、LCCのインディゴと組む狙いはどこにあるのか。JALの路線事業本部長を務めるロス・レゲット常務に、提携に合意したドバイで狙いを聞いた。そこには、インドNo.1のシェア以外の要素もあった。

◆定時性も高いLCC

 JALがインディゴと提携する理由として、インド最大の国内線シェアは当然重要な要素だ。インディゴの国内線でインド各地から訪日客を集め、JALの羽田-デリー線や成田-ベンガルール線に乗り継いでもらう。

 「訪日以外にも米国西海岸へ乗り継げる」(レゲット氏)と、アジア-北米の乗り継ぎ需要も取り込む。インドは高いスキルを持つIT人材が豊富で、日印間の往来拡大だけでなく、人材交流の促進も期待できる。

 こうしたコロナ後の本邦航空会社の定番戦略である3国間流動の獲得だけでなく、インディゴのパートナーとしての魅力が運航品質だ。同社は「手頃な運賃と定刻通りのフライトを提供し、比類ないネットワークを通じて手間のかからない旅行体験を提供すること。低価格=低品質ではない」という理念を掲げている。

 「LCCの中でもクオリティーが高い。定時性も高く、インド国内ではビジネスクラスのサービスも始めるようだ」(同)と、運航品質が高く、JALが組む上で問題ないと判断した。今回の提携に先立ち、インディゴ便に乗ったJAL幹部も「普通の(FSCが運航する)国内線のようだった」と印象を話す。

 英シリウム(Cirium)がまとめた2023年の定時到着率を見ても、アジア太平洋地域では全日本空輸(ANA/NH)が82.75%で1位、JALは2位で82.58%(1位と0.17ポイント差)、3位はタイ・エアアジア(AIQ/FD)の82.52%(同0.23ポイント差)、4位がインディゴで82.12%(同0.63ポイント差)、5位はニュージーランド航空(ANZ/NZ)で79.68%(同3.07ポイント差)となった。まさに「低価格=低品質ではない」を具現化している。

◆インドのプレミアム旅行を再定義

 インディゴによると、国内線ビジネスクラスはオーダーメイドタイプのサービスを検討しており、8月には具体的な内容やサービス開始日、対象路線などを発表できそうだといい、「インドのプレミアム旅行を再定義する」としている。

 JAL便に接続するインドの大都市としては、ムンバイ、チェンナイ、ハイデラバード、コルカタ、アーメダバード、アムリットサル、コチ、コインバトール、ティルバナンタプーラム、ティルチラーパッリ、プネ、ルックノウ、ヴァラナシ、ゴアなどが挙がる。インディゴのインド国内線ネットワークにより、日本からもインド各地を訪れることができる。

 また、インディゴは今年5月にエアバスA350-900型機を30機確定発注。2027年から受領が始まる見通しで、長距離路線への投入を視野に入れている。現在は2機のボーイング777-300ERをターキッシュエアラインズ(旧称トルコ航空、THY/TK)からリース導入し、トルコ路線に投入しているが、ワイドボディ(広胴)機の自社発注は初めてだ。

 KLMオランダ航空(KLM/KL)出身で、同社のトップを務めたピーター・エルバース氏が、2022年にインディゴのCEO(最高経営責任者)に就任以降、さらに積極的な戦略を打ち出している。FSCの豊富な知見を持つエルバース氏のCEO就任で、インド最大のLCCは日本人がイメージするLCC像を打破していくことになりそうだ。