GaN FETのデッドタイムをほぼ0に、アナログ・デバイセズが高効率化製品群

AI要約

アナログ・デバイセズは、GaNソリューションに関する会見を開き、高効率のパワー半導体であるGaNデバイスを提案している。

現在注目されているのはGaN FETを用いた高電圧の電源システムで、アナログ・デバイセズはそれに対応する電源ICを展開している。

今後は、200V対応の製品も投入予定であり、産業機器や医療機器向けに提案を進めていく。

アナログ・デバイセズはGaN FET自体を手掛けてはいないが、GaN FETベンダーとの良好な関係を持ち、最適な制御を実現するためのICを提供している。

提供されている製品には、GaN FET向けのドライバICや降圧コントローラーICがあり、スイッチング損失を削減するなどの特徴を持つ。

GaN FETのデッドタイムをほぼ0に、アナログ・デバイセズが高効率化製品群

 アナログ・デバイセズは2024年5月31日、東京都内で会見を開き、同社のGaN(窒化ガリウム)ソリューションについて説明した。2023年から100V対応の降圧コントローラーICとドライバICを投入しており、モーターをはじめとする産業機器、大型の医療診断機器、データセンター、宇宙機器などに向けた提案を強化する方針だ。

 アナログ・デバイセズ米国本社 マルチマーケット・パワー製品事業部 シニアディレクターのデイビッド・アンディーン(David Andeen)氏は「高効率のパワー半導体であるGaNデバイスは、その特性を適切に引き出すことが難しいが、当社のGaNソリューションであれば可能になる」と語る。また、アンディーン氏が博士号を取得したカリフォルニア大学サンタバーバラ校が、GaNをベースとする青色発光ダイオードでノーベル賞を受賞した中村修二氏を迎えたことを強く記憶しているエピソードなども紹介した。

 GaNデバイスは、パワーアンプやLED光源などで既に広く利用されているが、現在最も注目されているのはGaN FETを用いた高電圧の電源システムになる。ノートPC用のACアダプターなどで一般消費者が目にする機会も増えている。ただし、GaN FETはデバイスごとの変動性が大きいため特性が一定とはいえず、電源システムにおける適切な制御が難しく、信頼性も高いとはいえない状況にある。

 GaN FETそのものを手掛けていないアナログ・デバイセズだが、その力を適切に引き出すための電源ICを2023年から展開している。今回の会見で紹介した、ノーマリーオフGaN FET向けの100VハーフブリッジGaNドライバIC「LT8418」と、100V対応の同期整流式降圧コントローラーIC「LTC7890」(2相)と「LTC7891」(1相)がGaNソリューションとなる。

 LT8418は、定格で10nsと低い伝搬遅延で変動性に対応し、定格1.5nsと厳密な伝搬遅延マッチングなどで最適な制御を実現するとともに、スマートブーストトラップスイッチを内蔵することで堅牢性も確保している。LTC7890/LTC7891は、GaN FETの制御では一般的とされる40~60nsのスイッチング時のデッドタイムをほぼ0nsにすることでスイッチング損失を大幅に削減できるなどの特徴がある。

 アンディーン氏は「当社はGaN FETは手掛けていないが、多くのGaN FETベンダーとは良好な関係にあり、評価ボードや開発キット、参照デザインなどにも採用されている。今後は、近い将来に200V対応の製品を投入できるだろう。より高電圧対応の製品はもう少し時間がかかるとみている。既に産業機器や医療機器、そして車載向けなどの引き合いがあり、高い信頼性が求められるミッションクリティカル用途を中心に提案を進めていく」と述べている。