米供与の主力戦車、「ロシアに標的を差し出しているようなもの」 ウクライナ兵証言 CNN EXCLUSIVE

AI要約

ウクライナに供与された主力戦車「M1エイブラムス」の乗員が、戦車の弱点や欠陥について明かし、装甲の不足や技術的問題、弾薬の不適合性を指摘している。

ドローンによる攻撃や戦争の変化に対応するため、エイブラムス戦車の有用性に疑問が投げかけられており、実際戦場で遭遇した限界も報告されている。

ウクライナの前線で活躍するエイブラムス戦車は、装甲の欠陥や弾薬の問題、技術的トラブルに直面しながらも、激しい戦闘に参加している状況である。

米供与の主力戦車、「ロシアに標的を差し出しているようなもの」 ウクライナ兵証言 CNN EXCLUSIVE

(CNN) 米国からウクライナに供与された主力戦車「M1エイブラムス」の乗員らはCNNに対し、この戦車の一連の弱点や欠陥について語った。乗員らは絶えず変化する戦争の最前線での有用性に疑問を投げかけている。同戦車は、バイデン米大統領が米国の「ウクライナに対する永続的で揺るぎない関与」の証しとして供与を発表したものだ。

CNNは報道陣として初めて、ウクライナ東部でおよそ6台のM1エイブラムスを目撃した。

ドイツで訓練を受けた乗員らによると、エイブラムス戦車には現代の兵器を阻止できる装甲が欠けている。この1000万ドル(約15億8000万円)の主力戦車はイラクでサダム・フセイン元大統領の軍隊や反乱軍と戦うために使用された。

乗員の一人は「この装甲は現在では不十分だ」と語る。「乗員を守ってくれない。実際、今日の戦争はドローン(無人機)を使った戦争だ。だから今、戦車が展開すると、ドローンは常に戦車を攻撃しようとする」

別の乗員は、戦車が「第一の標的」であり、防御できなければ乗員は戦場で生き残れないと話した。

乗員はCNNに対し、損傷した戦車1両に装甲を取り付けるところを見せてくれた。取り付けたプラスチック爆薬のプレートは弾丸が当たると爆発し、その爆風で戦車を保護する。

エイブラムス戦車を受け取った旅団の関係者らによると、ウクライナに配備された31両はすべて東部の前線近くで交戦中だ。

ウクライナの前線の多くは現在、自爆攻撃ドローンに圧倒されている。小型で精密な装置で、群れを成して歩兵を襲撃し、戦車に重大な損害を与えることもできる。兵士がゲーム用のゴーグルを装着して操縦する、いわゆる一人称視点(FPV)ドローンは戦争の性質を変えた。装甲車両は動きが制限され、新たな脆弱性が露呈した。

ウクライナの乗員らは、ロシアが2月に制圧したアウジーイウカ周辺での激戦でエイブラムス戦車の限界を身をもって学んだ。装甲が貫通し、操縦士が片足を失ったのだ。

一方で戦車は技術的な問題も抱えているようだ。

乗員によると、CNNが目撃したエイブラムス戦車はポーランドから到着したばかりにもかかわらず、CNNの訪問中、エンジンのトラブルでほとんど動かなかった。さらに雨や霧の中では結露で車内の電子機器が壊れることもあるという。

ウクライナの他の前線と同様、弾薬も問題だ。乗員らは自分たちが従事している戦闘に適さない種類の弾薬を持っているようだと話す。

「我々が持っているのは、戦車同士の直接戦闘に適したものだが、こうした事態はめったに起こらない」「砲兵として戦闘に加わるほうがはるかに多い。木々や建物を破壊しなければならない。家に17発撃ってもまだ倒壊しなかったこともある」