ジョージア、「反スパイ法」成立へ 議会が大統領の拒否権却下 欧米と関係悪化確実

AI要約

ジョージアの議会がスパイ活動の抑止を名目とした法案について、ズラビシビリ大統領が発動した拒否権を議決で否決。法案は成立が確実となり、欧米との関係悪化が避けられない状況に。

法案に対する抗議デモが起き、議決を受けて法案は再び大統領へ送付される。首都トビリシではデモが続き、関係当局が数十人を拘束したと報じられる。

法案は外国の資金提供を受ける団体をスパイとみなし、財務報告を義務付ける内容。ジョージア国民はロシアの法律との類似性を指摘し、法案への懸念を強めている。

欧州連合(EU)加盟を目指す南カフカス地方の旧ソ連構成国、ジョージア(グルジア)の議会は28日、スパイ活動の抑止を名目とした「外国の影響の透明性に関する法案」に対してズラビシビリ大統領が発動した拒否権を却下することを賛成多数で議決した。タス通信が伝えた。国民の大規模な抗議デモを引き起こし、EUや米国も反対してきた法案は成立が確実となった。欧米とジョージアの関係悪化は避けられない見通しだ。

議決を受け、法案は署名のためズラビシビリ氏に再び送付された。ただ、同氏が署名を再び拒否した場合でも、パプアシビリ議長の署名で法案は成立する。

首都トビリシでは28日、議決に抗議するデモが起きた。過去1カ月間以上にわたって断続的に起きたデモには計数十万人が参加し、少なくとも計数十人が当局に拘束されたとされる。

タス通信によると、EUのボレル外交安全保障上級代表や米国務省のミラー報道官は28日、議決を非難した。一方、ジョージアのコバヒゼ首相は「法案はジョージアのEU加盟の可能性を高める」と主張した。

法案は、外国から一定の資金提供を受けて活動する団体を事実上のスパイとみなして当局への財務報告を義務付け、違反した場合は罰金を科すとする内容。4月上旬にコバヒゼ政権の与党「ジョージアの夢」が議会に提出していた。

ただ、類似の法律「外国の代理人法」が施行されているロシアでは、プーチン政権が反体制派などを弾圧する道具として同法を活用。このため、法案に反発するジョージア国民は「コバヒゼ政権がロシアのように法律を恣意(しい)的に運用し、政治弾圧に使う恐れがある」「EU加盟が遠のく」と主張し、抗議デモを続けてきた。EUや米国も「法案は人権侵害や言論弾圧につながる」として可決しないよう求めてきた。

しかし、コバヒゼ政権は「法案は外国勢力の活動を監視するために必要だ」と主張し、今月14日に法案を可決。法案に反対するズラビシビリ氏が18日に拒否権を発動していた。