【コラム】悪天候か、暗殺か…陰謀説に揺れるイラン政治(2)

AI要約

イランにおける次期最高指導者選びの葛藤についての見方と、外部勢力介入の謀略説を超えた内部権力闘争に関する考察が示されている。

次期大統領選挙の候補者選定において、改革派候補の出馬が制約を受ける状況について詳述されている。

イラン政局における権力構造や候補者選出のプロセスについて、民心や憲法に基づく重要性が強調されている。

◆次期最高指導者めぐる葛藤

外部勢力介入の陰謀説とは違い、ライシ大統領の死が内部権力闘争の産物という見方もある。イランでは1939年生まれで今年85歳と高齢のハメネイ師を後継する次期最高指導者にハメネイ師の次男モジュタバ氏とライシ大統領が挙がっている。公式的な肩書なく水面下で勢力を誇示するモジュタバ氏よりも、国民的な認知度ではるかに上回るライシ大統領が有力だった。それでモジュタバ氏の支持勢力がライシ大統領を除去したという陰謀説が出ている。

後継問題がすべて「説」を根拠とするという点でそれらくしく見えるが、実際、現在のイラン政局はこの問題で権力闘争をするような状況ではない。さらに世襲王政を倒して共和政を築いたと自負するイランがパフラヴィー王政時代のように最高指導者を世襲で譲れるような国ではない。モジュタバ氏がいくら能力が優れていても、父の後光で最高指導者や大統領になるのは難しい。強い国民的な反感と反発にぶつかるからだ。すでに数年前にもモジュタバ氏の後継者説に対してローハニ前イラン大統領は大衆演説で、イランがなぜ世襲王政を倒したかを振り返ってみるべきだと声を高めた。

◆改革派の大統領選出馬は源泉封鎖

故人となったライシ大統領の任期は来年8月までだった。生きていれば歴代大統領のように難なく再選したはずだ。その場合、ライシ大統領の実質的な任期は2029年までだったと見ることができる。大統領の死去から50日以内に新大統領を選出するという憲法に基づき、大統領選挙は来月28日に決まった。新大統領の任期は前任者の残余期間でなく4年だ。

イランの大統領は最高指導者に次ぐ国家権力序列2位だ。三権分立機関のうち行政府の長であり立法府の長である国会議長、司法府の長と事実上同級といっても過言でない。最高指導者の意で三府の長が集まって国家の重大事を決める慣例は、ライシ大統領が司法府の長だった時期にできた。イランで立法府や司法府とは違い、大統領は民心を把握できる席だ。民心の全面的な支持を受けた大統領は最高指導者にも厄介な存在だ。

次期大統領候補にはライシ氏と同じ政治的立場を持つ現国会議長のガリバフ氏、2013年の核交渉代表だったサイード・ジャリリ氏が挙がっている。強硬派が掌握した政局に不満を抱いて背を向けた若者の心をつかむには力量が不足する候補だ。2020年の総選挙(投票率42.57%)、21年の大統領選挙(48.48%)、今年の総選挙(40.64%)で表れた民心は投票率が表しているように低い関心だ。

民心を収拾するには少しでも大衆的な人気があり穏健な人物が必要だ。こうした点で浮上する候補はラリジャニ前国会議長だ。若者に人気がある改革派は大統領になりにくい。誰でも出馬登録はできるが、最終立候補者は6年任期の委員12人で構成された憲法守護委員会が決定するからだ。このうち6人は最高指導者がイスラム法専門家を直接任命する。ほかの6人は最高指導者が任命した司法府の長がイスラム法をよく知る一般法専門家を推薦し、国会の同意を得て任命する。

2021年大統領選挙立候補者審査で改革派の候補13人は全員脱落した。大統領選挙法には候補審査の脱落理由を明らかにしなければならないという条項はない。したがって審査の詳細内容は公開されない。新大統領も憲法守護委員会の候補審査の結果にかかっている。

パク・ヒョンド/西江大ユーロメナ研究所待遇教授