安倍元首相は「戦争の危機あおろうとした」…韓国の文在寅氏が回顧録、金正恩氏かばう記述に批判

AI要約

文在寅前大統領が回顧録を出版し、米朝交渉の決裂や日韓関係、北朝鮮の金正恩総書記について触れた内容が批判を浴びている。

回想録では、文前大統領が金正恩氏をかばう記述や、安倍元首相への批判、日本政府への責任転嫁などが含まれている。

保守派からは非難の声も上がっており、文氏の北朝鮮政策への姿勢や日本政府への非難が物議を醸している。

 【ソウル=小池和樹】韓国の文在寅(ムンジェイン)前大統領が17日に回顧録を出版した。自身が仲介して始まった2018~19年の米朝交渉が決裂したのは、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官ら強硬派が「トランプ(前)大統領の足を引っ張った」ためだと記した。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記をかばう記述が目立ち、「正恩氏の報道官だ」(与党議員)と批判を浴びている。

 文氏は18年4月に軍事境界線上の板門店(パンムンジョム)で行った南北首脳会談で正恩氏が「核は徹底的に自分たちの安全を保障するためのものだ。使う考えは全くない」と語ったと記した。「自分の娘の世代まで核を頭に乗せて生きさせたくない」と話したという。

 正恩氏は、国連安全保障理事会の対北経済制裁について「正直言って大変だ。経済を発展させることが最も重要な課題なのに難しい」とこぼした。正恩氏は、同年6月に史上初の米朝首脳会談が控えていることに期待を示しつつ、自分には「何の(外交)経験もない」と不安を口にし「どうアプローチすれば良いか」と文氏に尋ねた。「(正恩氏は)とても礼儀正しく話ができると感じた」と印象を記した。

 トランプ前大統領の助言役でもあった安倍元首相については「戦争の危機をあおろうとした。対話を通じて(北朝鮮)問題を解決しようとする私たちの努力を支持するつもりが全くなかった」と批判した。

 文政権下では元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題をめぐり日韓関係は極度に悪化したが、文氏は日本政府の対韓輸出管理の厳格化を挙げ「韓日関係を萎縮(いしゅく)させた責任は日本政府にある」と決めつけた。

 回顧録は文前政権の崔鍾建(チェジョンゴン)元外交省第1次官によるインタビュー形式で書かれた。北朝鮮に融和的で日米に懐疑的な左派の文氏の考えが反映された。

 保守の尹錫悦(ユンソンニョル)政権で対北朝鮮政策を統括する金暎浩(キムヨンホ)統一相は20日、「北朝鮮の善意に国民の生命や安全保障を任せれば問題を引き起こす」と回顧録を批判。与党議員からも「北朝鮮の非核化(の意図)を今でも本気で信じているのか」と非難する声が上がっている。