アンナ・サワイ「日本人女性の内に秘めた強さや深みを表現していきたい」

AI要約

アンナ・サワイは米FX製作のドラマ『SHOGUN 将軍』での演技が評価され、エミー賞主演女優賞にノミネートされた。彼女は戸田鞠子という複雑な役柄を演じ、重要なシーンでモーツアルトの曲を聴くことで役作りに励んだ。

サワイは鞠子という役に10ヵ月間取り組み、感情を解放することができたと語っている。シーズン1の終了後も、サワイはエミー賞主演女優賞にノミネートされ、その演技は高く評価されている。

視聴者や批評家からの反響が高いドラマに対して、サワイは自己批判的で最終回まで不安感を抱いていたが、最終的には鞠子が愛されたことを実感することができた。

アンナ・サワイ「日本人女性の内に秘めた強さや深みを表現していきたい」

米FX製作のドラマ『SHOGUN 将軍』での演技が評価され、エミー賞主演女優賞にノミネートされたアンナ・サワイ。受賞の期待が高まる彼女に、米紙「ニューヨーク・タイムズ」がインタビューした。

*エミー賞授賞式は9月15日(日本時間16日朝)。本稿にはドラマのネタバレが含まれます。

アンナ・サワイは「死」の前に、モーツアルトを聴いたという。

それはドラマ『SHOGUN 将軍』の重要なシーンだった。サワイが演じたのは、高貴な出自でありながら謀反人の娘という宿命を背負わされた女性、戸田鞠子だ。戸田はそれが死刑宣告に等しいと知りながら、狡猾な石堂和成(平岳大)に猛然と食ってかかり、壮絶な最期を遂げた。

その大事なシーンに備えて、サワイはモーツアルトのレクイエムのなかの「ラクリモーサ」を聴いたと語る。

「本当に気持ちを高めてくれる曲で、パワーをもらいました」と彼女は言う。そして、そのエピソードの監督を務めたフレデリック・E・O・トーイについてはこう続けた。

「フレッドが何度も私のところに来て、『もう2~3テイク撮れるかい?』と確認したのを覚えています。私の答えは、『もちろん、大丈夫よ。今日は調子がいいし、やりましょう』でした」

封建時代の日本を舞台に、ジェームズ・クラヴェルによる1975年の小説を原作とした『SHOGUN 将軍』のシーズン1は、主にアンナ・サワイ演じる戸田鞠子と、英国人航海士のジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャービス)との関係に焦点が当てられた。

ブラックソーンが日本に漂着したことが引き金となり、このドラマの軸となる抗争が勃発。その抗争によって鞠子は、カトリックの信仰や日本の伝統的な慣習への忠誠心と、ブラックソーンに寄せる想いや抑圧者たちへの正義感の間で揺れ動くことになる。そしてその葛藤は、彼女の死へとつながっていく。

「あのエピソードの準備は大変だったでしょうと、よく言われます」とサワイは話す。「でもあのエピソードを通じて、10ヵ月間ずっと押さえつけていたものを、ようやく解放することができました」

鞠子の物語は幕を閉じたが、サワイとその役柄の関係が終わったわけではない。サワイは、エミー賞ドラマ部門の主演女優賞にノミネートされる快挙を達成。鞠子のなかにあった使命感と欲望の間の複雑な感情を果敢に探求した彼女の演技は、秘められた部分が多かった分だけ、いつまでも人々の心に残るものとなった。

ニュージーランド出身の日本人俳優であるサワイに、戸田鞠子という日本人女性を演じた意義や、初のエミー賞ノミネートが彼女にとってどんな意味を持つかについて聞いた。

──『SHOGUN 将軍』に対する反響は、「面白そうなドラマだね」から「秀逸なドラマだ」を経て、「いますぐこの女優にエミー賞を与えなければ」へと瞬く間に変化したようですね。あなた自身は、この盛り上がりを感じていましたか?

パソコンの前に座ってすべての反響を読んでいたわけではありませんが、私のなかには常に自己批判的な部分があるんです。ドラマが好評を博している最中でさえ、「次のエピソードを気に入ってもらえなかったらどうしよう」と不安でした。

最終回を迎えてようやく、「ああ、みんな本当に鞠子を気に入ってくれたんだ」と実感できました。鞠子のキャラクター造形が素晴らしく、それが視聴者に愛された理由ですが、私の演技もそれほど悪くはなかったのかもしれませんね。