「嘘つき」発言に苛立つ習近平…「中朝友好の足形」を埋め、「金正恩」と8カ月間交流なし プーチンと北朝鮮との蜜月も一因か

AI要約

習近平中国国家主席と金正恩朝鮮労働党総書記、ロシアのプーチン大統領の関係に変化が生じている。習氏と金氏の交流が途絶えつつある中、プーチン氏と金氏は蜜月関係であり、最高級車の贈呈などで親密な関係が続いている。一方、習氏とプーチン氏の関係は中国の対ロ支持を巡りすき間風が吹いている。

習氏と金氏の不仲説がささやかれるようになったきっかけは、両者の「銅の足跡」が消されたことで明らかになった。この「銅の足跡」は、大連での首脳会談を記念して造られたもので、亀裂が生じた際に壊されたとされている。

ポンペオ氏の回顧録によると、金氏は中国に対して批判的な発言を行っており、習氏は初めて金氏の本心を知った可能性が高い。このことが両者の友好の印を破壊するきっかけとなったと考えられる。

「嘘つき」発言に苛立つ習近平…「中朝友好の足形」を埋め、「金正恩」と8カ月間交流なし プーチンと北朝鮮との蜜月も一因か

 習近平中国国家主席と金正恩朝鮮労働党総書記、ロシアのプーチン大統領の三角関係に大きな変化が生じている。プーチン氏が金氏に約1億5千万円ものロシア製最高級車「アウルス」を2台も贈呈するなど両者は蜜月関係であるのに対して、習氏と金氏は今年元旦に新年の祝電交換以来、交流が途絶える一方、習・プーチン間では中国によるウクライナ戦争への消極的な対ロ支持をめぐり、すき間風が吹いている。【相馬勝/ジャーナリスト】

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 習氏と金氏の不仲説がささやかれるようになったのは、ある出来事が表に出たことがきかっけだった。習氏と金氏が2018年5月に中国東北部の大連市で首脳会談を行った際、両首脳が景勝地の浜辺の道路を並んで歩いて歓談したことを記念した2人の「銅の足跡」がアスファルトで埋め戻されて消えていたのだ。

 この大連での首脳会談は、金氏が18年3月、最高指導者就任後初めての外遊となった北京訪問からまだ2カ月も経っていないなか行われたもので、短期間での習氏との2回の首脳会談は習氏が金氏との関係を極めて重視していたことを示しており、「銅の足形」も中国側の提案で造られたものだ。

 今年7月に韓国メディアが報じたところによると、付近の住民らは「銅の足形」が消されたのは地方政府当局者の指示で、昨年の秋ごろだったと証言しており、造られて5年以上も経過したあと壊れされたのは、昨年秋までに両者の関係に大きな亀裂が生じたことを暗示している。

 それは何だったのか。昨年1月に出版されたマイク・ポンペオ前国務長官の回顧録にそのヒントが書かれていた。そのなかで、ポンペオ氏は18年3月に北朝鮮を極秘裏に訪問した際の金氏と会談内容を記している。

 ポンペオ氏が「在韓米軍を撤退させれば金委員長が喜ぶと中国がアメリカにいつも話している」と伝えたところ、金氏は笑ってテーブルを叩きながら、「中国人は嘘つきだ」と述べた。そして、金氏は「在韓米軍は中国の脅威から自分を守るために必要だ」と述べ、「中国が在韓米軍の撤退を望んでいる理由は、朝鮮半島をチベットや新疆のように扱いたいからだ」と語ったという。

 この金氏の発言は習氏にとっては衝撃的だったことは容易に想像できる。「中国人は嘘つき」で、中国が朝鮮半島をチベット自治区や新疆ウイグル自治区のように弾圧するという内容の言葉を米国政府高官に訴えるのは尋常ではない。習氏は金氏の本心を初めて知ったに違いない。だからこそ、5年以上も保存していた両者の友好の印を破壊させたのではないか。

 しかも、金・ポンペオ会談は、初の習・金会談と近い時期に行われていることからも、習氏は金氏の偽善性を強く感じたに違いない。