東アジア近現代史を見つめ直し、日台関係の源流をたどる「日本統治期 台湾の経済、産業発展再考」

AI要約

台湾は日本統治下にあった約半世紀の歴史を持ち、現在でも国際的地位におかれる。

日本と台湾の関係は複雑であり、経済面での密接な関係が続いている。

霞山会の新刊により、日本統治期の台湾経済や産業発展について再考されている。

東アジア近現代史を見つめ直し、日台関係の源流をたどる「日本統治期 台湾の経済、産業発展再考」

明治維新後の日本にとって初の本格的な対外戦争・日清戦争の結果による1895年の下関条約から1945年の第二次世界大戦の終結まで、約半世紀の間日本の統治下にあった台湾は、その特異な歴史、地理によって、今日にいたってもなお複雑な国際的地位におかれている。

特に日本との関係は、1952年の日華平和条約、1972年の日中共同声明合意による「断交」と、紆余曲折を経ているが、戦後高度経済成長を無しとげたアジアの工場・日本の下請け工場などとして経済においては密接な関係を維持し、近年は地震災害などを通じた相互の支援、また鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収、台湾CTBCバンク(中国信託商業銀行)による東京スター銀行に買収、さらには今年2月に開所したTSMC熊本工場に象徴される台湾の先端半導体技術を軸とした新たな形の日台連携が、米中関係、日中関係、中台両岸関係の変化とともに注目されている。

その日台関係を直視するとき、経済貿易の統計以外の重要な視点として、日本統治期の経済、産業の発展に対する検証の重要性もあげられる。 今日の特殊な日台関係は、それ相応の特殊な源流を持っており、日本と台湾、そして韓国の研究者も加わってその源流に迫ったのが霞山会の新刊『日本統治期 台湾の経済、産業発展再考』(小山三郎責任編集/近現代東アジア研究叢書編集委員会/国立台北大学歴史系共編)だ。

日清戦争直後の1898年に設立され、終戦直後の1946年に解散した民間外交団体「東亜同文会」の設立理念と基本財産を継承した一般財団法人「霞山会」は2022年11月、東アジアにおける「文化・教育・研究交流による相互理解の促進」「アジア諸国・地域との交流流を深め。世界平和に貢献」という理念をもと、台湾の台北大学と国際シンポジウム「東アジア近現代史の中の変遷・対抗・融和─歴史・教育、産業・経済の視点から」を共催した。

その際の日本、台湾、韓国の研究者による報告を①「経済政策の形成とその展開─植民地政策研究が語る台湾・挑戦、植民政策の実相(海洋・酒造)」②「インフラ事業の建設・運営─無線電信の確立、観光鉄道の出現、鉄道会社経営の実相」③「戦前から戦後:連続性と再利用─現代に息づく歴史の連続性(台湾映画・日本式宿舎)」の3章に分け、広範囲にわたる時代、分野の最新研究としてまとめた。

「霞山アカデミー 近現代東アジア研究叢書」創刊という位置づけでもあり今後シリーズ化される方針。台北大学の李承嘉学長は「歴史研究が時間を主軸とし、地理研究が空間をフィールドとするならば、地理的領域を研究空間とし、同時に歴史的視点を取り入れてこの空間を解釈・分析することは、人文学的な時間と空間を結合した研究となります」との序を寄せており、激動の東アジアの今後を考える道標となるだけでなく、日台双方の学術発展への寄与も期待される。