スターバックスが「ガラガラ状態」に…ガザ侵攻によってマレーシアで起きている「不買運動」

AI要約

マレーシアの首都クアラルンプールにおけるイスラエル不買運動の影響が次第に和らいでいる様子が見られる。

マレー系のイスラム教徒客が徐々に戻りつつあり、ショッピングモール内の人気ブランド店舗も再び客を見込むことができるようになってきている。

過激派団体による不買運動の影響で、一部の店舗は休業を余儀なくされたり、脅迫・逮捕の事件も発生していた。

スターバックスが「ガラガラ状態」に…ガザ侵攻によってマレーシアで起きている「不買運動」

 イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの侵攻で、中東や東南アジアのイスラム圏では、イスラエルを支持するアメリカ企業への不買運動が広がってきたが、筆者が18年から拠点を持ったマレーシアの首都クアラルンプールでは、そのテンションがやや下がってきた印象だ。イスラム教徒と見られるマレー系の客がいくらか戻ってきているのである。

 6月9日、同じショッピングモールにあるマクドナルド、ケンタッキー・フライドチキン、スターバックスを巡ってみたところ、いずれもヒジャブを被った女性客がいた。

 年間を通じて平均気温27度前後、その暑さから人々は街歩きより冷房の効いたショッピングモールが好きなマレーシア人、そのモール内には日本同様、マクドナルドなどアメリカンブランドのファストフード系が多数あるが、昨年11月ごろから急激にイスラム教徒のマレー系の客が消え、不買運動を目の当たりにしてきた。

 土日なら席が埋まるほど盛況だった各店舗が、どこもガラガラ。中華系やインド系の客は変わらず来ていたが、人口の6割以上がマレー系のため、行列も見られなくなった。驚いたのはスターバックスで、あまりの閑古鳥に、12月に「BUY ONE FREE TWO」を期間限定で行ない、ひとつの値段で3つも買えた。

 これは筆者も試してみたが、いくら客が少なくても店員の仕事が3倍増だから、カウンターの上にたくさんの飲み物が置かれたまま、誰が買ったものか分からなくなる混乱が起きていた。ちなみに現在も「2つ目が半額」というキャンペーンは行なわれている。

 昨年からイスラム教徒たちに話を聞いていたが、この不買運動は必ずしもみんなから支持されていたわけではなかった。

 「ブランドはアメリカでも会社はマレーシア企業で、働いている人もマレーシア人なのに、こんなことをやって何の効果があるのか分からない」

 「自分たちの首を絞めているだけ。店が潰れたら職を失うのはマレーシア人なのだから」

 「不買運動に賛同しているのは貧困層が多い。ラルフローレンとか着ている人に嫉妬しているのもあるのでは」

 こういった声が多数、ささやかれたいたのだ。SNSでは「マレー人がスターバックスにいるのを見た。彼らはガザでの大量虐殺など気にしていない」、「マクドナルドに金を払う人は虐殺する武器を支援しているのと同じ」という投稿が溢れていたから、内心はどうあれマクドナルドやスターバックスには行かないムスリムがほとんどだった。

 扇動していたのは一部の過激派団体で、飲食店だけではなく、コカ・コーラやディズニー、ヒューレット・パッカードなどに対しても「商品を買うな」という声を上げ、マレーシアで250以上の店舗を展開する日本のファミリーマートに対しても、「系列会社がイスラエルの軍事企業と協力関係を結んでいる」、「日本政府はハマスへの制裁を決めた」という理由で、不買運動の対象にしていた。

 結局、マレーシアではマクドナルドだけでも100店舗以上が休業に追い込まれ、食事をしていた客を、複数の男たちが取り囲んで脅迫、逮捕される事件も起きた。経営者がマレー系であっても、SNSでは「社長もアメリカ支持者」というデマが広げられた。