技能実習生を友だちのように支援 日本の高・大学生が広げる「多文化共生の輪」

AI要約

ベトナムなどからの技能実習生を支援する高・大学生による活動が共生の新たな糸口を示している。

Adovoは実習生に対して日本語教室を提供し、送り出し機関と連携して実用的な言葉や文化も教えている。

Adovoは孤立化やコミュニケーション不足を防ぐため、交流会やイベントなど様々な取り組みを行っている。

少子高齢化による労働力不足の深刻さが増すにつれ、外国人受け入れについての議論が盛んになっている。そうしたなか、ベトナムなどからの技能実習生を支援する高・大学生による活動が共生の新たな糸口を示している。

同世代の友人のように実習生をサポートするNPO法人「Adovo」の代表・松岡柊吾さんと、代表補佐の荘司遥香さんに取材した。

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NPO法人「Adovo」の荘司遥香さんは高校3年生だった2023年8月、人生初の海外渡航でベトナムを訪れた。

同団体の活動の一環で、自分たちが支援をする技能実習生が来日前にどのような生活を送っているのかを視察するためだ。提携する首都ハノイの送り出し機関で、2週間彼らの寮に滞在し、寝食を共にした。

早朝に起床してランニング、その後は授業という規則正しくハードなカリキュラムに当初はとまどったが、部屋を共有した実習生とは家族やお互いの趣味などについて話し、友人のように打ち解けた。それまでは、「オンラインでつながる画面の先にいる人たち」だった彼ら一人ひとりの個性も見えてきた。

「一緒に時間を過ごすほどに、実習生も自分たちと同じひとりの人間なんだと思うようになりました。そのことに気がついてからは、彼らとさらに仲よくなりました」と荘司さんは言う。

Adovoを立ち上げたのは、代表を務める松岡柊吾さんだ。2020年12月、高校1年生のときに友人2人と共に設立した。活動はいまも、高校生と大学生によって運営されている。

きっかけは、技能実習生を支援するベトナム人僧侶ティック・タム・チーさんが松岡さんの通う高校に講演にやってきたことだった。それを機に実習生に関するドキュメンタリーを視聴した松岡さんは、自分と同世代の外国人の若者のなかに、賃金の未払いや職場での暴力に苦しみながら日本で働いている人がいることに衝撃を受けたという。

自分にも何かできることはないかと、それから数ヵ月かけて関連の報道や書籍などを読んでリサーチをした。その過程で、技能実習生が日本で働くうえで最も重要なスキルである日本語を学ぶ場を提供できないかと思い至り、ベトナム現地の送り出し機関や活動に興味を持ってくれそうな企業などに連絡をとりながら、2021年9月に初めてオンラインによる日本語教室を実施した。

技能実習生は来日前後に一定期間、日本語の講習を受けるものの、内容は授業をおこなう組織によって差異がある。また、来日後は職場と寮の往復で地元の人たちと触れ合う機会がなく、日本語を使わなくなってしまう場合もあるという。

Adovoでは、同世代である自分たちだからこそ提供できる内容を意識し、実習生が職場や地元の人たちと交流する際に役立つ言葉を授業に盛り込む。

送り出し機関での講習会の統括を担当していた荘司さんによれば、授業の前には毎回、受講生が派遣される予定の地域を送り出し機関に確認し、その土地の方言や若者が使うスラングなど、一般の教科書からは学べないような言葉を取り上げる。日本での生活に戸惑わないよう、食事や生活のマナーなども教える。教室を初めてからまもなく3年、独自に制作した日本語教材も充実してきた。

同世代の日本の若者たちによる日本語教室は、来日を控えた実習生にとってもまだ見ぬ日本の実像に触れるよい場になっている。提携する送り出し機関からは、「実習生が来日前に日本の同世代の若者と交流できる貴重な機会」だと喜ばれているという。

日本語教室は、実習生を雇用する企業などでおこなう出張型や、オンラインによるマンツーマン型などさまざまな形式がある。他にも浅草観光などのイベントやオンライン交流会を実施するなど、来日した実習生の孤立化、コミュニケーション不足による日本語力の低下を防ぐ取り組みに力を入れる。

2023年7月からはNPO法人「Mother’s Tree Japan」と共に、日本での妊娠・出産、避妊方法などの情報を提供する講習会も新たに開始した。

●Adovoは、交流会や日本語教室などの活動資金を募るクラウドファンディングを2024年7月8日まで実施しています。

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