スペインの「生理休暇法」 注目を集めたのに「あまり活用されていない」ことが判明 一体なぜ?

AI要約

2023年6月より施行されたスペインの生理休暇法について。取得回数や問題点、意見の対立などを概観。

法律の実際の運用としては、あまり利用されていないことが指摘されている。

法律が女性の権利向上や就職状況への影響など、さまざまな意見が存在している。

スペインの「生理休暇法」 注目を集めたのに「あまり活用されていない」ことが判明 一体なぜ?

2023年6月より施行されたスペインの生理休暇法。「欧州初」と大きな話題になったが、約1年間がたち、蓋を開けてみれば「あまり利用されていない」ことが分かった。

スペインのインクルージョン・社会保障・移民省のデータによると、最初の11ヵ月間で取得された生理休暇の回数は1559回のみ。

2023年6月1日~2024年4月24日までに取得された平均休暇は3.03日で、1日平均4.75人が休暇を取得したという。

同省は、このデータは人口約4900万人のスペインで、何人の従業員が休暇を利用したかではなく、休暇が取得された「回数」を反映するものだと強調しており、「導入以来、その使用は月ごとに安定している」と、英紙「ガーディアン」に述べている。

しかし、この政策は意見の対立を招いている。同紙によれば、これを女性の権利にとっての前進だと考える人もいるが、失策だとの声もある。

スペインの医療専門家でジェンダー研究を専門とするアイリーン・アテリドは、「効果があったとは思えない」と語っている。

2023年にこの法案が可決された際、この法律は、生理痛が酷い場合に、医師の許可があれば労働者が必要なだけ休暇を取得できるようにするものだとして宣伝されていた。

しかし、最終的に可決された法案の文言には「月経休暇は子宮内膜症などの疾患を持つ人に限定されていた」と、彼女は指摘する。

「診断されていない場合、かかりつけの医者は月経休暇を承認することができません」

しかも、子宮内膜症などの疾患を抱える人の多くが、症状を軽減させるために避妊薬を服用している。そのため「おそらくほとんどの疾患者は(薬で排卵を抑制しているため)生理がない」。よって生理痛もない。「この法律は、不条理なのです」。

また、仮に薬を服用していなかったとしても、「休暇を申請する度に医師のところに行かなければならないのも問題」だと主張している。なぜなら、激しい痛みがある場合、病院に行くこと自体が困難になるからだ。

彼女は施行後、一度だけ生理休暇を申請した。その試みは成功したが、「それは私が法律とその申請・処理方法を理解していたから」だと述べている。

「私の主治医は、この法律がどのように機能するかを知らなかったたため、なぜ医師の承認が必要なのかを説明しなければならなかった」

スペイン北部に住む別の女性も、医師や地元の職員がこの新しいシステムを理解しておらず、結局、生理休暇を取得できなかったと、地元紙に語っている。

ただ、この法律は、女性の生理痛に対する社会的認知を高めることには成功しており、進歩的なステップだという意見もある。

「生理痛が酷い日に、無理をして仕事に行かなくてよくなったのは大きな安心です」

しかしアテリドは、この法律により、子宮内膜症の女性=定期的に休みを取る傾向があるという認識が広まってしまえば、彼女たちの就職状況が危うくなる可能性が出てくると指摘する。

失業率が12%前後と欧州で最も高い「スペインの雇用市場で、この法律によって子宮内膜症の女性たちが自分の症状を職場でオープンにできるようになると考えるのは、あまりにも無知なことです」