フランスの人気哲学者が伝授する「職場で幸せになるために必要な3つのこと」─現代人は「承認欲求」を誤解している

AI要約

哲学を学ぶことで、仕事や幸福について考えるきっかけが得られる。

幸福とは、良好な人間関係や承認、成長を通じて自己実現を感じることにある。

職場での幸福を追求する際、承認と名声の違いや自己成長の重要性を理解する必要がある。

フランスの人気哲学者が伝授する「職場で幸せになるために必要な3つのこと」─現代人は「承認欲求」を誤解している

シャルル・ペパンはフランスの哲学者だ。パリ政治学院とパリ経営大学院を卒業した後、哲学の大学教授資格を取得。哲学を万人にわかりやすく解説するベストセラーを何冊も書いてきた。ベルクソンといった哲学者の言葉だけでなく、サッカー選手のズラタン・イブラヒモビッチの言葉も著作に引用するのが特徴だ。

ペパンの言葉に通底するのは、思考するきっかけを人に与え、人が物事に疑問を持ち、ときには自分の考え方自体にも疑問を持てるようにするところだ。フランスのビジネス誌「クーリエ・カードル」が、ペパンに「仕事で生きる哲学」を聞いた。

──哲学を学ぶことは、仕事に役立ちますか。

哲学を学ぶと、自分がいまやっていることが何なのかについて考え、その意味を問えるようになります。それは必ずしも仕事にとってプラスではありませんよね。世のなかには意味を見つけるのが難しい仕事が多くありますし、その仕事をする意味を知ったら、「そんな仕事なんて引き受けられない」といった話になってしまうこともありえます。

哲学を学んでも、仕事をするのが快適になったり、労働が無痛になったりするわけではありません。哲学の役割は、物事に疑問を抱くことだからです。職場のウェルビーイングにこだわる昨今の風潮に私が違和感を覚えるのは、その辺に理由があります。

ただ、職場で幸福になるには何が重要なのかという問いなら、哲学は進むべき道を照らしだしてくれます。私に言わせれば、幸福にとって何よりもまず大事なのが人間関係です。私が仕事で幸福だとしたら、それは私が一緒に働く人たちと良好な人間関係を築けているからです。

やっている仕事自体がつまらなかったり、給料が低かったりしても、そうした良質な人間関係があれば、埋め合わせになります。世界のどの文明でも、日々接する人との関係の質が、幸福の第一の要件になっています。

哲学で知られている第二の幸福は、承認されることです。哲学者のヘーゲルは、ヒトという動物が何よりも求めるのは承認だと指摘しました。人間の第一の欲求は、承認の欲求だというわけです。

ただ、現代人は、この承認を誤解しがちです。ヘーゲルによれば、承認とは、自分の仕事の価値が客観的に認められることです。でも、現代人は、承認と名声を混同しがちなのです。

手っ取り早く言うと、現代人は有名になりたいだけです。これは本当の承認ではありません。本当の承認とは、給与の額や与えられた役職で示されるものですし、そうしたものを通さなくても、労いの言葉などで示せるものです。

職場で幸福になる第三の鍵は、そこで自分を成長させられるかどうか、というところです。

哲学的に言うと、これは幸福よりも、スピノザが言う「喜び」に近いかもしれません。喜びとは、自分の潜在能力、力、才能を高められることです。私たちは実践を通じて自分の能力を高められたり、自分を成長させられたりしたときに、喜びを感じるのです。

職場で承認されてはいないけれど、一緒に働く人たちは好きだから、その仕事を続けているというときもあります。逆に、一緒に働く人たちは好きとは言えないけれども、職場で承認されているので、その仕事を続けているというときもあります。

一緒に働く人が好きでなく、承認もないなら、それは大問題です。もしかすると勇気を出してその職場を離れ、別の仕事を始めたり、新たに技術を学んだり、職人になったりするのがいいのかもしれません。