中国でインターネットサイトの数が激減 「不都合な記憶や歴史が消し去られている」

AI要約

中国のインターネットが厳格な規制により縮小し、過去や不都合な歴史が消し去られている状況が報じられている。

主要ソーシャルメディアが存在せず、中国独自のSNSでは物事を婉曲に表現し、検閲によりコンテンツが消えつつあるという。

中国のインターネットの縮小が統計データで示され、政治的圧力によりコンテンツが消滅させられていることが明らかになっている。

中国でインターネットサイトの数が激減 「不都合な記憶や歴史が消し去られている」

米ニューヨーク・タイムズは天安門事件から35年を迎えた6月4日、中国当局による厳格なネット規制の現状について報じた。それによると、中国のインターネットが急速に縮小の一途をたどり、ウェブサイトの数は激減。投稿は検閲され、人々の過去や不都合な歴史が消し去られている、という。

同紙によると、中国ではGoogleからYouTube、Facebook、X(旧ツイッター)など、世界中で利用されている主要ソーシャルメディアは存在せず、中国人はその事実を認識している。中国独自のSNSでは当局の規制を逃れるため、物事を婉曲して表現し、投稿やアカウントが検閲されても諦めて受け入れる。彼らはインターネットの“パラレルユニバース”に生き、それを自虐することさえあるという。

さらに、ショート動画やライブ配信、電子商取引でにぎわう中国のネット社会の裏側で、ネットユーザーたちはサイバー空間とそこにあったコンテンツが断片的に消えつつあることを認識しつつある。

今年5月22日に中国のメッセンジャーアプリ「微信(WeChat)」に投稿され、広く共有されたあるユーザーの記事は、1995年から2005年の間に中国のニュースポータルやブログ、掲示板、SNSに投稿されたほぼ全ての情報がなくなったと指摘。「中国のインターネットは加速度的に崩壊している」との見出しが付けられた問題の記事は予想通り、すぐに検閲された。

正確にどれだけのコンテンツが消えたのか、どんなコンテンツなのかを判断するのは不可能だ。そこでニューヨーク・タイムズは、中国のトップ検索エンジン「百度」を使って1990年代半ばから2000年代半ばまでの期間に焦点を当て、中国で最も成功したIT起業家、アリババのジャック・マー(馬雲)氏とテンセントのポニー・マー(馬化騰)氏について検索してみた。

すると、前者の検索結果はゼロ件で、後者はわずか3件のエントリーがヒットしたのみだった。また、当時2つの主要省でトップを務めていた習近平国家主席に関して検索してみたところ、結果はゼロ件だったという。

過去数十年で中国最大級の災害とされ、2008年5月12日に約6万9000人が犠牲となった四川大地震について調べるため、地震発生当日から1年間に絞って百度で検索すると、9ページにわたる検索結果を表示した。ところが、そのほとんどは政府または国営放送の記事だった。

ニューヨーク・タイムズ紙は、消えゆくコンテンツと共に中国のインターネットが確実に縮小しているとし、2023年の中国の総ウェブサイト数が390万件で、2017年の530万件から3分の1以上減少したとする中国のネット規制当局による統計データを紹介した。

中国のネット利用者は現在10億人に上り、世界のオンライン人口のほぼ5分の1を占める。だが、オーストリアのIT企業Q-Success社でネットのコンテンツ言語を分析している部門ウェブ・テクノロジー・サーベイ(Web Technology Surveys)によると、中国語サイトの数は世界全体のわずか1.3%で、2013年の4.3%から減り続け、10年間で70%激減した。

同社によると、中国語サイトは現在、インドネシア語やベトナム語のサイトの数よりわずかに多いだけで、ポーランド語やペルシャ語のサイトより少ない。また、イタリア語サイトの半分で、日本語サイトの約4分の1となっている。 減少の理由の一つは、古いコンテンツをアーカイブすることが技術的に困難で、コストがかかることだ。ただ、それは中国に限ったことではない。そして、もう一つが政治的理由だ。

習指導部の下、国がますます権威主義的かつ国家主義的な方向へ向かう中、ネット出版、特にニュースポータルやSNSのプラットフォームは検閲の圧力が高まっている。それは、中国のサイバースペースを政治的、文化的に“純粋に保つこと”が中国共産党の最重要課題だからだ。それに迎合してネット企業は過剰に自主検閲し、アーカイブ化せずに古いコンテンツを消滅させている。

そんな中、中国政府が共有の記憶や歴史を断片的に消し去ることに対抗し、ブロックされたコンテンツのへのアクセスを提供するウェブサイトがいくつか存在する。その一つ、非営利団体「Ch​​ina Digital Times」のサイトは、削除または削除される恐れのある記事などをアーカイブしている。

同サイトは4日、中国のサイバースペースから“抹殺”された天安門事件35周年について、編集者の記事を掲載した。「1989年6月3~6日にかけ、中国人民解放軍は天安門広場で起きた民主化や表現の自由を求めた学生運動を鎮圧するため、数百人または数千人の北京市民を無差別に殺戮した」とし、「記念日に関する行事や犠牲者への追悼行事は、中国のネット上では日常的に検閲され、6月4日は中国の政治カレンダーの中でも最大級に敏感な日だ」と解説した。 当然、中国では「六四天安門事件」等を検索しても何もヒットしない。