韓国国会が史上最悪の「泥仕合」に、野党の“特検法”乱打で尹錫悦政権が崖っぷち

AI要約

第22代国会が開院し、野党が与党を上回る議席を獲得。与党政権との対立が予想される中、野党が特検法を乱発し混乱が予想される。

特に注目を集めるのは、金建希夫人疑惑を捜査する特検法と海兵隊員死亡事件を捜査する特検法。法案の内容や捜査に関連する疑惑が計画されている。

海兵隊員死亡事件では、捜査過程で大統領室から外部圧力があった疑惑も浮上。疑惑の中心となる過程や対応についても詳細が明らかになっている。

 4月10日に行われた韓国総選挙の当選者で構成された第22代国会が5月30日に開院した。総選挙で大勝を収めた共に民主党の171議席、祖国(チョグク)革新党の12議席を含め、野党が全議席の3分の2近い192議席を占め、与党の国民の力は108議席にとどまった。

 第21代国会と同じ少数与党状態で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は行政府と国会の激しい対峙が予想される。ただ、第22代国会は国民からひどく人気のない尹大統領がこれから任期中盤から後半へと差し掛かるだけに、野党の激しい攻勢に耐えることはさらに難しくなる見通しだ。

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■ “美しすぎるファーストレディー”周辺の疑惑続々

 実際に野党は、第22代国会が始まってからわずか3日のうちに、すでに複数の「特検法」を発議した。

 韓国には、通常の検察組織から独立した特別検察官が捜査を行う特別検察官制が存在する。国会において個別の事案ごとに特別検察官の任命等に関する法律を制定し、その法に基づいて大統領が任命した特別検察官が、事件の捜査、公訴提起の決定などを行う制度だ。この「特権法」の発議が乱発され、尹錫悦政権の政権運営は混乱に陥る可能性が高まっている。

 共に民主党は「海兵隊兵士殉職事件特別検事法」と「金建希(キム・ゴンヒ)夫人疑惑事件特別検事法」、そして祖国革新党は「韓東勲(ハン・ドンフン)特別検事法」をそれぞれ発議。このうち、金建希夫人特別検事法と海兵隊兵士殉職事件特別検事法は、第21代国会でも発議されたが、尹大統領の拒否権行使で廃棄された法案で、国民からも賛成の声が高く、尹大統領としては非常に負担になる事案である。

 まず、「金建希夫人特検検事法」は、現在検察が捜査中のドイツモーターズ株価操作事件のほかに、ブランドバックの収受事件、楊平(ヤンピョン)高速道路路線変更疑惑(高速道路終点を金夫人一家所有の土地のそばに持ってくるため路線変更したという疑惑)など、7つの事件を捜査するという内容だ。

 この特検法の内容は、共に民主党と祖国革新党だけが特別検事の候補推薦権を持ち、特検関連令状を発行する専担判事を別途に選定し、裁判も専担裁判部を別途に選別するという超法規的な内容だ。韓国では不法な答弁取引(特検捜査に協力した人に刑の減軽、免除などの恩恵を与える交渉)条項も入れた。どんな手を使ってでも金建希夫人を有罪しようという執念がにじみ出ている法案だ。

■ 海兵隊員死亡事件の捜査に大統領室が圧力? 

 「海兵隊兵士殉職事件特別検事法」は、韓国メディアが金建希夫人特検よりも熱い関心を集めている。2023年7月、水害現場で行方不明者を捜索していた海兵隊員のチェ・スグン上等兵が急流に巻き込まれて死亡する事件があったが、この事件を捜査する過程で、大統領室からの外圧があったという疑惑に対する特別検事導入法案である。

 事件の経緯に少し触れておこう。チェ上等兵の死亡事件後、事件の捜査を担当していた海兵隊捜査団は、チェ上等兵の所属部隊である海兵隊第1師団のイム・ソングン師団長ら関係者8人に「業務上過失致死の疑いがある」という内容の調査結果をまとめ、これを国防部に報告した。

 李鍾燮(イ・ジョンソプ)国防部長官(当時)は、この報告を受けた後、「責任を負う人だけが責任を負うべきだ」とし、捜査権のある警察に事件を渡す「移牒」を見合わせるよう命令した。イム師団長らの名前を報告書から削除するように命じたのだ。

 だが捜査団はこの指示に従わず、事件を該当地域の警察庁に移牒した。

 すると国防部検察団は捜査団長だったパク・ジョンフン大佐らを「抗命」等の疑惑で告発し、警察から捜査書類を回収したうえで、改めてイム師団長らを除き、海兵隊の大隊長2人の犯罪疑惑だけを問う内容で、事件を警察に再移牒した。