注目の「15分都市」開発モデルは「現実的じゃない」?その弱点とは?

AI要約

「15分都市」は、生活に必要なサービスやアメニティが徒歩15分圏内に揃う都市計画モデルであり、環境への配慮も含まれる。

しかし、経済面では固定費や設立コストの高さが課題となり、顧客獲得が難しいと指摘されている。

さらに、15分圏内に職場を置くことが雇用のマッチングを悪化させる可能性もある。

注目の「15分都市」開発モデルは「現実的じゃない」?その弱点とは?

必要なサービスやアメニティが徒歩15分圏内にある「15分都市」。理想的な都市計画として、近年注目を集めている。

「15分都市」では、食料品店から医療、教育、飲食店、緑化スペース(公園)など、生活に必要なものがすべて自宅から徒歩、または自転車や電車で約15分圏内に揃う。

この狙いには、住みやすさや生活の質の向上はもちろん、住民たちが自家用車をほとんど使わずに生活することで交通渋滞の軽減、そして温暖化につながる人為的な汚染要因を減らすことがある。

しかし、「この流行の都市計画モデルは賞賛に値するものだが、現実的に経済が機能するかについては疑問がある」と、米メディア「ブルームバーグ」が報じている。

同メディアによれば、この「15分都市の経済学」は、そもそも「都市市場がどのように機能するかという基本原則に反している」という。

まず、小売店であれ医療機関であれ、どんな施設にも、家賃や光熱費などの固定費がかかる。さらに、特に専門設備が必要な診療所や、在庫管理のためにより広い敷地が必要になるスーパーマーケットなどは「設立コスト」も高い。これらの固定費や設立コストが大きくなればなるほど、それらを回収し、経済的に持続可能であるためには、より多くの顧客ベースが必要になる。

密度の高い大都市では、これらをカバーする大規模な顧客ベースの獲得も可能かもしれないが、低~中密度の都市では難しいと、同メディアは述べている。

実際、米国で最も人口密度の高い大都市であるニューヨークは、「15分都市が成功する可能性が最も高い場所のひとつ」であるが、それでもテナント料をはじめとする高額なコストをカバーできるほどの顧客を集めるのは困難だと言われている。

困難な理由には、「小売スペースとゾーニング(各地域を用途別に区画すること)の問題」もある。

小売用のゾーニングが増加しているにもかかわらず、小売スペースの需要は頭打ち、もしくは減少し続けている。この波にはニューヨークですら太刀打ちできていない。

長年にわたる小売スペースの過剰なゾーニングや建設が、市内に空き店舗が多い主な理由のひとつになっており、計画と実際の経済需要との乖離が浮き彫りになっている。都市計画は「オンラインショッピングの台頭などの世界的な変化を考慮し、現実的な需要に適応させる必要がある」という。

さらに「職場も15分圏内に」という考えは、「雇用のマッチングの悪化につながる可能性がある」とも指摘している。

都市は労働力の共同化と共有によって繁栄するが、15分圏内で「これを達成するのは困難」。非効率な雇用市場につながり、住民の雇用の機会を制限する可能性があるようだ。