【安田記念・先手必勝】ついに見つけた輝ける舞台!〝苦労人〟パラレルヴィジョンが頂点に立つ

AI要約

今年の安田記念の注目馬は、苦労を乗り越えてGⅠ初制覇を目指すパラレルヴィジョン。過去の勝ち馬を振り返りながら、その戦績や成長を紹介している。

パラレルヴィジョンは、デビュー前に骨折や戦績の振れがあったものの、マイルの適性を見せつけて重賞勝利を果たし、今回はGⅠ初挑戦となる。国枝調教師も期待を寄せている。

故障や路線転向を経て、ついに輝ける舞台を見つけたパラレルヴィジョン。苦労人の活躍に期待が高まる。

【安田記念・先手必勝】ついに見つけた輝ける舞台!〝苦労人〟パラレルヴィジョンが頂点に立つ

[GⅠ安田記念=2024年6月2日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1600メートル]

 今週日曜(6月2日)の東京メインは、春のマイル王を決める第74回安田記念。伝統の一戦として知られるが、馬券的な面白さも十分で過去10年の3連単はすべて万馬券。うち5回は10万円超えの高配当となっている。そこで当欄が注目したのはパラレルヴィジョン。この春に重賞初制覇を飾ったばかりの“苦労人”が、勢いそのままにGⅠの舞台でも波乱を呼ぶ。

 過去10年の勝ち馬で連覇を飾った昨年のソングラインを除く9頭のうち6頭には共通点があった。それは安田記念が“初GⅠ制覇”だったこと。3歳時はクラシック路線を歩んだ距離短縮組に加え、牝馬路線組や上がり馬が集う春のマイル王決定戦。マイルの専門家が、別ルートからやってきた馬に足をすくわれることもしばしばあるのだ。今年で言えばセリフォスやダノンスコーピオン、ナミュールあたりには嫌なデータと言えよう。

 逆に初制覇組の戦績を振り返ると“苦労人”の姿が見えてくる。モーリス(2015年)はクラシック路線や転厩を経ての戴冠。サトノアラジン(17年)はキャリア25戦目にして、ダノンキングリー(21年)は7度目のGⅠ挑戦での金字塔だった。

 その点、今回がGⅠ初挑戦となるパラレルヴィジョンもなかなかの苦労人だ。

 まずは2歳の夏。6月東京のデビュー目前になんと骨折が判明…。当初は大事に至らないという見立てだったものの、その後も紆余曲折があって、ようやくデビューできたのは3歳の4月の未勝利戦だった。そこから連勝を飾って9月にはGⅡ神戸新聞杯に挑戦。1番人気の支持を受け、勝てば菊花賞も見えてきそうな情勢だったが、レースではスムーズさを欠いて7着に敗れた。

 翌年は芝中距離路線を歩んだものの、3勝クラスで5戦して3、2、3、3、4着と足踏み。「パンチ不足」(国枝調教師)と判断した陣営が選んだ次なる戦場はダート。初戦のJRAアプリリリース記念(東京ダート1600メートル)を制した時には新天地が見つかったように思えたが…続く霜月Sで12着に敗退すると「案外な内容」と見切られて、再び芝のニューイヤーSへ。距離は1600メートルを選択したのだが、これが大正解だった。好位で楽に追走すると、直線では危なげなく抜け出してV。国枝師も「これまでにない勝ちっぷりで、芝のマイルへの適性の高さを見せてくれた。これなら重賞でもやれる」と高評価。その言葉通りにGⅢダービー卿CTも連勝すると、今回は名手・ルメールを伴って堂々とGⅠの舞台に駒を進めてきた。

「ゆったりした気性から中距離を使ってきたけど、ここ2戦はこれまでにない切れ味。マイルが合っていたんだね。この距離は3戦3勝と底を見せていないし、何より馬が充実している。ここ目標に仕上がりも申し分ないし、今ならGⅠ挑戦でも」(国枝師)

 故障や度重なる路線転向を経て、ついに見つけた自分が輝ける舞台。今年は“苦労人”パラレルヴィジョンが頂点に立つ。

 ☆パラレルヴィジョン(馬名)「米国、日本など4か国を巡回したアウトサイダー・アートに焦点を当てた展覧会」の意。母アールブリュット=生(なま)の芸術から連想された。その名のごとくさまざまな戦場を渡り歩いてきた同馬が、芸術的な走りでGⅠ初制覇を決めるか。