「メディアにとって僕は、質問する必要のない存在なんだ」…日本代表GKシュミット・ダニエルが経験した「絶望の日々」

AI要約

21歳のGK、鈴木彩艶がAFCアジアカップでの失点が非難を浴びる

アルゼンチン人指導者がシュミット・ダニエル起用を提案

シュミットはワールドカップでの経験を活かし、次の大会での出場に意欲

「メディアにとって僕は、質問する必要のない存在なんだ」…日本代表GKシュミット・ダニエルが経験した「絶望の日々」

 年始ににカタールで開催されたAFCアジアカップにおいて、サムライブルーは準決勝進出を果たせなかった。ゴールマウスを守った21歳のGK、鈴木彩艶は5試合連続で失点し、非難の的となった。

 浦和レッズで現役生活を終えた後、同ジュニアニアユース、ユースの監督を務め、今日、埼玉県上尾市を基盤とするトリコロールFCで中学生を指導するアルゼンチン人、セルヒオ・エスクデロは「どうして、森保一監督は、シュミット・ダニエルを使わないんですか? 彼と鈴木では、安定感が違う。雲泥の差なのに…」と訝しる。

 2022年のワールドカップで、日本代表の一員として現地入りしたシュミットだが、出場機会は得られなかった。

 シュミットは振り返る。

 「ワールドカップは、刺激だらけの大会でした。小さい頃から夢に描いていたものを、遥かに上回っていましたね。規模も想像していたより大きく、全世界が注目していることを実感しました。日本代表は、ドイツとスペインに勝って、躍進しましたが、それぞれ興奮する内容だったじゃないですか。僕は試合に出ていないのに、かなり消耗しました。ベンチにいるだけでしたが、感情のアップダウンが凄かったです。

 ドイツに勝った時に、皆で喜びあっている光景が一番心に残っています。もちろん、ピッチに立ちたかったという思いはありますよ。試合後は毎回、ミックスゾーンを通ってバスに乗り込むんですが、試合に出場していない僕には、誰からも、何一つ声がかからないんです。メディアにとって僕は、質問する必要のない存在なんだという現実があって、流石に悔しいなと思いました。毎試合、それを感じました」

 だからこそ次のワールドカップでは、必ずピッチに立つ! と新たなゴールを定めてシュミットはカタールを後にした。

 「ワールドカップでの経験と、次はあのフィールドでプレーしたいという強い気持ちの2点を胸に現地を離れました。日本代表がサプライズを起こしたように、何が起こってもおかしくないのがワールドカップなんだなと学びました。サウジアラビアもアルゼンチンに勝ちましたし、幾つか予想を大きく覆したゲームがありましたよね。

 ワールドカップって強豪国にとっては凄くプレッシャーを覚える大会で、アンダードッグは、番狂わせを起こすことができる舞台でもあります。それが起こりえることを、肌で味わいました。優勝経験のあるドイツ、スペインがプレッシャーを感じて焦っていましたからね。現場に行かないと感じられなかったことですよ」

 昨夏、新たな目標に向かって走り始めたシュミットに対し、リーグ・アンのFCメスから移籍のオファーが届く。2019年にシント=トロイデンの一員となり、4シーズンで110試合戦っていたシュミットにとって、ステップアップのチャンスであった。

 「シント=トロイデンで迎えた3年目くらいから、『もう長いな。このチームには十分いたな』という気持ちがありました。自分のプランでは、もっと早く移籍する予定だったんです。メスから話がきた時は、『あぁ、デカいリーグに行ける! 』という思いでした」

 しかし、この話は直前で破談となる。

 「真実は分かりません。が、予想するに、メスのプランが変わって、僕との契約をしない方向に持って行きたくなった。そこで理由を見付けるために『メディカルチェックに問題が…』という風にされたんじゃないかと。そうとしか考えられないです。

 自分がいなくなることを前提にシント=トロイデンは、鈴木彩艶選手を獲得していましたから、出場機会もなくなって……。モチベーションを保つのが難しかったです。でも、やっぱり次のワールドカップでピッチに立ちたいので、そこを目指すには、ここで腐っちゃいけない、と自分に言い聞かせていました」