休場続出で番付崩壊…「現行制度の限界」で相撲ファン不満爆発も識者「力士は稽古の見直しを」の提言 

AI要約

大相撲5月場所で大荒れの展開が続いている。横綱や大関の相次ぐ休場や陥落に関する問題点が浮き彫りになっている。

力士の稽古量やトレーニング方法、入門時期などが現在の問題の一因として挙げられている。

相撲協会や専門家も危機感を持ち、制度の変更などを模索しているが、解決策は容易ではない。

休場続出で番付崩壊…「現行制度の限界」で相撲ファン不満爆発も識者「力士は稽古の見直しを」の提言 

大荒れの大相撲5月場所。初日に1横綱4大関が敗れると、2日目に横綱照ノ富士と貴景勝が休場。7日目に大関霧島が。その他にも関脇若元春(11日目から復帰)、小結朝乃山が休場しており、小結から上の番付力士9人中5人が休場するという異常事態が起きている。

さらに、先場所新入幕で初優勝という110年ぶりの快挙を成し遂げた前頭6枚目の尊富士も休場中だ。

「尊富士は先場所の14日目、朝乃山に敗れた際に右足を捻挫。場所後の巡業を全休しましたが間に合わず、今場所全休ということになってしまいました。その結果、来場所はおそらく十両陥落が決定的。これに、相撲ファンからは、『取り組み中のケガなのだから、公傷ということにできないのか?』『110年ぶりの快挙を成し遂げたのに、1場所休んだだけで十両陥落は納得できない』などといった声が上がっています」(スポーツ紙大相撲担当記者)

不満の声はこれだけではない。ここ数年、大関に昇進しても、数場所で陥落してしまう力士が激増。’21年には朝乃山(大関在位7場所)、’22年には御嶽海(大関在位4場所)、’23年には正代(大関在位13場所)。そして、来場所、霧島(大関在位6場所)の陥落が決まっている。横綱は陥落こそしないが、照ノ富士に至っては、在位17場所で10度目の休場となる。

この現状に、相撲ファンからは、《現行年6場所というスケジュールに限界が来ているのではないか》《そもそも番付の意味がなくなってきているのではないか》という声が多く上がっている。「制度を変えるべきでは?」というのは、相撲ファンにとって至極素朴な疑問だが、相撲協会や専門家は現状をどのように感じているのだろう……。

「昔の力士に比べて稽古量も少なく、正直、現役力士が柔になってきています。そんな柔な力士たちに合わせて、制度を緩くするというのは相撲のレベル低下につながり、いかがなものかと思います」

そう語るのは、相撲ジャーナリストでフリーアナウンサーの横野レイコ氏だ。まず、尊富士の十両陥落については、

「尊富士が先場所優勝したのに、一場所休場しただけで十両陥落はおかしいという声はSNSなどで確かにあるけれども、前頭6枚目で全休すれば15敗扱いとなり、十両に落ちてしまう。110年ぶりの新入幕優勝だろうが、現行制度では何ら不思議なことではありません」

その理由について、

「土俵上のケガであっても、現在は公傷制度はありません。かつてはありました。しかし、あまりに多くの力士が制度を利用して休場するものだから、北の海理事長の時の’03年に廃止になりました(前年7月場所において公傷の7人を含む関取16人が休場したことを協会は重く見た)」

と説明する。制度の変更に関してはどうか。

「これも痛し痒しなんです。昔の力士と比較した場合、今の力士は確実に稽古量が減っています。その結果、肉体面だけでなく、稽古で鍛えられるべき精神力も鍛えられず力士が柔になっています。ケガをしない身体づくりのために筋肉を鍛えるということを怠っているのでおのずとケガも多くなっています。

救済措置はある程度必要かもしれません。しかし、協会には『大昔からこれでやってきた。稽古が足りないんだ。だから変える必要はない』という考えの親方もいます。低いレベルに合わせるのではなくケガに負けない身体作りをする必要はあると思います」

相撲ライターのどす恋花子こと佐藤祥子氏も概ね同意見だ。

「横綱、大関が新入幕力士に優勝を許すというのは、それだけ上位陣がだらしないということです。武蔵川親方(元横綱武蔵丸)は、よく『番付が崩壊している。横綱、大関の価値がなくなっているよ』と嘆いています。昇進基準にも問題はあります。たまたま勢いがあった時に、数字上で3場所計33勝以上というだけで大関になれてしまう。相撲内容や精神力といったものの評価はそこにありません。その結果、本人が苦労する結果になっています」

そして、佐藤氏も、稽古量の少なさとその質が一番の問題と指摘する。

「ここ数年、トレーニングジム的な筋トレに力を入れる力士が増えていますが、バーベルなどの負荷トレーニングで筋肉量を増やした結果、硬い筋肉がついてしまい、ケガにつながってしまっていると指摘する専門家や親方は多い。やはり、先人の知恵とはすごいもので、『四股、てっぽう、すり足』が相撲に合った柔らかい筋肉を作るのに一番適しているそうです。

これは、アメリカのNFLの研究でも証明されているとのこと。でも、最近はその基本をおろそかにする力士が多い。筋骨隆々だった千代の富士(元横綱)は、器具を使ったトレーニングを極力避け、脱臼癖を治すための腕立て伏せ、あとはひたすら四股、てっぽうの基礎稽古で体を作ったそう。やはり、基本に立ち返るのが一番だと思います」

そして、もう一つ別の視点から、現状の問題点を横野氏は語ってくれた。

「今の現役力士たちは小学生から相撲を始め、大学まで相撲を続けて入門する相撲エリートの子ばかりです。だから、相撲年齢は実はそれほど若くない。プロに入る頃にはすでに10年以上の相撲年齢で学生時代に何かしら故障を抱えていたり、トレーニングのし過ぎで筋肉が硬くなっていたりする。照ノ富士、貴景勝もケガを重ね、大関、横綱に上がる頃には満身創痍の状態です。昔は、全国にいる体格のいい子を中学卒業と同時にスカウトし、入門して初めて相撲に触れるという力士も多かった。15歳の若い子に相撲のために必要な体づくりをしっかり施し、成長と共にお相撲さんの体になっていった。

中学までバスケットボールをやっていた白鵬や鶴竜なんてまさにそうです。今の日本人力士は、相撲年齢的にすでにピークを過ぎてから入門しているようなものです。15歳で入門して、まさに叩き上げで25歳になった力士と、小学生から大学生まで相撲をやってきて25歳になった学生出身力士とでは、相撲年齢があきらかに違う。即戦力になるからスカウトする側も学生に頼ってばかりでじっくり育てる気風がない。少子化もあり未経験者が入ってこない現状もあって問題点は多く、一概に、こうするべきだとは言えないのです」

相撲協会も危機感を感じていることは間違いないのだから、何かしらの手を打つ必要はあると思うがーー。

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