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【内田雅也の追球】「クリーンアップ」の4番
大山悠輔がクリーンアップヒッターとしての役割を果たし、プロ8年目で通算500打点を達成した。
大山はチームの勝利を願い、献身的な姿勢で打点を重ね、存在感を示している。
リードオフマンとの連携も取りながら、大山は4番としてチームに貢献している。
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◇セ・リーグ 阪神2-1広島(2024年5月22日 マツダ)
クリーンアップは塁上の走者を「掃除する」という意味だ。日本ではクリーンアップトリオとして3、4、5番の3人を指す。もとはアメリカでクリーンアップヒッターと呼び、4番打者1人を指す。
大リーグで4番打者として歴代最多の2041試合に出場したのがエディ・マレーである。1970~90年代、オリオールズ、ドジャースなどで活躍し、史上3人目の3000安打・500本塁打を達成している。「史上最強のスイッチヒッター」との呼び声も高い。
マレーは「野球はチームスポーツだ」が口癖だった。「野球はチームとして勝ったり、チームとして負けたりするものだ。多くのことをみんなで一緒にやるんだ」
この姿勢はオリオールズで3、4番を組んだカル・リプケンも大リーグデビュー当時「彼から多くを学んだ」と語っている。「チームのためにどうするか、ゲームのためにどう準備するのか。プロ精神を学んだんだ」
どこか、阪神の4番・大山悠輔を思わせる。謙虚に真摯(しんし)に野球に向き合う。大山もまた「野球はチームスポーツ」という信念を体現する選手である。
そんな大山がこの夜、文字通りクリーンアップヒッターとしての役割を果たした。1回表、2死二塁から左翼線へ先制打を放った。
これで通算500打点となった。プロ8年目での到達は球団最速タイという。現監督・岡田彰布の910試合を上回る891試合目である。
チームの勝利を願い、個人記録や数字を追うのは本意ではないだろう。ただし、打点はチームの勝利に直結する数字である。誇ればいい。
タイトルに縁遠かったマレーも81年に打点王、80年代10年間で最多996打点を記録している。
大山は3回表1死二、三塁では右中間深くに犠飛を上げ、2点目をたたき出した。これがチーム全得点で、クリーンアップヒッターとしての存在感を示した格好だ。
今季は開幕当初から体調不良、打撃不振に苦しんできた。今も打率2割1分3厘、18打点は不満だろうが、「チームのために」と献身的な姿は誰もが4番と認めている。
岡田は「リードオフマン(1番・近本光司)が出て、4番が打点をあげて……というのは、いい形と言えるな」と笑顔が浮かんだ。 =敬称略= (編集委員)