「本気で引退を決めました」リーチマイケルがラグビーW杯後に味わった“最大の挫折”「未来が見えない状態でした…」《NumberTV》

AI要約

35歳のリーチマイケルがキャリア最深の谷底を経験し、引退を考えるまでの苦悩を語る。

怪我や手術を繰り返す中、未来を見失い挫折を感じる中でも、友人の支えを受け立ち直る決意をする。

最終的には、立ち上がり続けたリーチが楽しみを見いだし、新たなチャレンジに向かう姿が描かれる。

「本気で引退を決めました」リーチマイケルがラグビーW杯後に味わった“最大の挫折”「未来が見えない状態でした…」《NumberTV》

 35歳のいまもジャパンの魂として仲間を引っ張るリーチマイケル。その鉄人が「キャリア最深の谷底」を語った「Sports Graphic Number×Lemino」制作のドキュメンタリー番組NumberTVから特別記事を掲載する。<全2回の後編/前編へ>

【初出:発売中のNumber1104号[挫折地点を語る]リーチマイケル「現役引退を決意していた」】

「若いときは強くなろうという気持ちがあったし、強くなる方法も分かっていました。だから未来を想像できました」

 本当の挫折は、気力を喪失し、未来を想像できなくなったときかもしれない。その意味での挫折を味わったのは、日本代表が史上初のW杯8強を達成した、翌年だった。

「最大の壁は2020年でした。2019年に練習をしすぎて両方の股関節を痛めて、恥骨炎症というケガをしました。その年のワールドカップは痛み止めの注射を何回も打ちながら出て、次の年に手術しました。それから復帰したんですけど、思い通りのプレーができなくて。キャプテンから降り、パフォーマンスも戻らず、2020年、本気で引退を決めました。それが最大の挫折です」

 両股関節だけでなく、両足首など計6箇所の手術を経験した。それでも調子は上向きにならない。リーチは身体を張ってリーダーシップをとるタイプだ。その肝心の身体を満足に使えなかった。

 人に頼らず自己解決するリーチは、悩みのスパイラルに陥った。何度倒れても起き上がってきた男の思考はやがて光の届かぬ谷底まで墜ちていった。

「未来が見えない状態でした。本当は続けたかったんですが、身体がもう、無理で。 2020年の時点で(復帰して) 1シーズンくらいやって、引退しようと」

 リーチが行き着いた最深の『挫折地点』。 しかし失意の男は、病室から、何かを手繰るように親友へ一本の電話をかける。それが谷底に差し込む一条の光になるとはリーチ自身、予想だにしていなかった。

 その電話から4年後。今、東芝ブレイブルーパス東京の練習場には伸びやかな心持ちのリーチがいる。

 幾多の挫折をへて、リーチはキャパシティが広がったと率直に語る。

「以前の練習量はボトムでしたが、いまはトップです。これまではずっと辛かったような気がする。今が一番楽しいですね」

 何度も立ち上がった。折れても、立ち上がった。その先に広がっていたものは屈託なく「楽しい」といえる日々だった。

<前編から続く>