【快勝した中国戦で復活を遂げた森保ジャパンの両翼(1)】あえて配置した“攻撃力に特化したアタッカー”同士が共鳴した場面……三笘薫が「今日は来ないのかな」と諦めかけた中で

AI要約

三笘薫が堂安律からのクロスでゴールを決め、日本代表が中国代表に勝利したアジア最終予選の初戦で活躍。

攻撃的な3バックのシステムで左ウイングバックを担い、南野拓実のゴールにもアシストをするなど、総合的な活躍を見せる。

ブライトンでの怪我から復活し、新システムで結果を残した三笘は、選手層の厚さと積み重ねた準備の重要性を強調。

【快勝した中国戦で復活を遂げた森保ジャパンの両翼(1)】あえて配置した“攻撃力に特化したアタッカー”同士が共鳴した場面……三笘薫が「今日は来ないのかな」と諦めかけた中で

 正直に明かせば、三笘薫(ブライトン)はあきらめかけていた。右サイドで堂安律(フライブルク)がボールをもつ。逆サイドを三笘がフリーで駆けあがる。ウイングバックからウイングバックへ。青写真はなかなか具現化しなかった。

「クロスの質次第ではそこ(逆サイド)がフリーになったので、いつ来るかな、と思いながら走っていた。ただ、前半は3回くらい走っても来なかったので、今日は来ないのかなと思いながらも、最後の最後に自分を見てくれたのでよかった」

 埼玉スタジアムで中国代表と対峙した、2026年の北中米W杯出場をかけた5日のアジア最終予選の初戦。日本代表が1点をリードして迎えた前半アディショナルタイムの47分に、三笘のフリーランニングが報いられる瞬間が訪れた。

 右サイドから堂安がインスイングで放ったクロスが、美しい放物線を描きながらファーへ飛んでくる。ターゲットとなった三笘は満を持して宙を舞い、完璧なタイミングで頭をヒット。代表通算8ゴール目を鮮やかに突き刺した。

「自分たちがボールをもったときにはウイングのポジションを取って、高い位置で仕掛ける動きを練習から求められていた。ホームで絶対に勝ち点3を取らなければいけなかった試合で、ポジションがウイングでもウイングバックでも、自分自身に課されていた仕事は変わらない。チームの勝利に貢献できてよかったと思っている」

 日本のアジア最終予選で歴代最多となる大量7ゴールを奪い、守っては中国をシュート1本だけで零封した試合後。森保ジャパンが6月シリーズから取り組む「攻撃的な3バック」で、左ウイングバックを担った三笘は自身に及第点を与えた。

 左右のウイングバックにサイドバックタイプの選手ではなく、あえて攻撃力に特化したアタッカーを配置。1トップと2人のインサイドハーフを含めた5人が、さまざまな形で攻撃に絡んでいくサッカーが求められたなかで、エンドが変わった52分にはインサイドハーフの南野拓実(モナコ)のゴールもアシストした。

 三笘が日本代表戦のピッチに立つのは、1-2で敗れてアジアカップから姿を消した、今年2月2日のイラン代表戦で67分から途中出場して以来だった。その後に腰を痛めて、ブライトンで迎えていた2シーズン目の後半を棒に振った。

 ゴールにいたっては、昨年6月20日のペルー代表との国際親善試合(パナソニックスタジアム吹田)以来だった。北中米W杯をにらんだ新たなシステムのなかで、さっそく結果を残したエースは、試合後にこんな言葉も残している。

「いろいろな選手が、いろいろな形で得点を取れるのは層が厚い証。いい意味で全員がいつも通りに、しっかりと気負わずにプレーできたのは、常日頃からみんなが高いレベルでプレーして、それをそのまま出せているからだと思う」

 待望のA代表デビューを果たしたのが、前回カタール大会出場をかけたオマーン代表とのアジア最終予選の第6戦。後半開始とともに投入され、三笘のアシストから決勝ゴールをあげた快足アタッカーもまた、中国戦で復活を遂げている。

(取材・文/藤江直人)

(後編へ続く)