鈴木優磨への依存度軽減はチームのレベルアップの証 鹿島が変化した2つの理由【コラム】

AI要約

3万3295人の観衆で埋まった県立カシマサッカースタジアムで行われた鹿島アントラーズ対浦和レッズの試合は無得点ドローに終わった。

鹿島は試合開始から攻勢を見せ、浦和も個人技で立ち向かう展開となった。

鹿島はチームのレベルアップが進み、依存度の高かった選手への依存が低下していることが変化として現れている。

鈴木優磨への依存度軽減はチームのレベルアップの証 鹿島が変化した2つの理由【コラム】

 3万3295人の観衆で埋まった県立カシマサッカースタジアムの上空に試合終了のホイッスルが響くと、最後まで激しい攻防を見せていた選手たちは、精根尽き果てたように、ピッチに膝をつき、そして倒れ込んだ。

 Jリーグ誕生時の「オリジナル10」にして、数々の激闘を繰り広げてきた鹿島アントラーズと浦和レッズが対戦したJ1リーグ第27節の一戦は、お互いにゴールを記録することができず無得点ドローで決着を見た。得点こそ生まれなかったものの、両チームの選手たちが激しい闘志を全面に出してプレーした試合は、実に見応えのある内容となった。

 最初に試合の主導権を握ったのは鹿島。ボールを奪うと展開力のあるロングキックや、狙い澄ましてのグラウンダーのスルーパスと多彩な方法で両翼へとつなげる。そこから敵陣深くに進出してゴール前にラストパスを送り、得点への勝負を挑む。立ち上がりの鹿島はボール運びが実にスムーズで浦和ゴールへと迫った。

 この劣勢の展開に浦和もただ手をこまねいているだけではなかった。戦術的な劣勢となった状況に、それならばと個人技で対抗していく。安居海渡や大久保智明が力強く、推進力のあるドリブルで鹿島守備網の攻略を目指す。チーム戦術の面で劣っていたとしても、この個人からほとばしる勇気は、単純な技術の差を超えることになる。戦術が重視される現代サッカーにおいて、力強いドリブル突破による状況打開の挑戦は、互角の勝負へとピッチの光景を変え、サッカーというスポーツの持つ醍醐味を加速させた。浦和の機転の利いた攻撃精神に端を発した、相手の果敢な仕掛けに負けまいとする姿勢のぶつかり合いにより、プレーは激しさを増していった。

 だが、ピッチには険悪な雰囲気はなかった。ゴール裏からカメラのファインダーに捉えた選手たちは、倒し甲斐のある相手と渡り合えることを楽しんでいるようにさえ見えた。

 リーグ上位に位置し好調を維持する鹿島だが、そのスタイルは前半戦と比較して変化を感じた。これまでのスタイルでは攻撃の形を構築するプレーにおいて、アシストからゴールゲットまで鈴木優磨への依存度がかなり高かった。しかし、ここにきて彼への依存度は低くなっている。そうした流れはチーム全体のレベルアップを示す徴候だ。