【自転車】世界の進化のスピードを痛感「早く君が代を聴かせてくれ」/中野浩一の目

AI要約

太田海也が失格となるなど、不手際や不信感が目立ったパリオリンピック自転車競技。中野慎詞も不運な落車で銅メダル逃す。

日本記録更新などもあったが、世界の進化には驚愕。競技の進化にルールや審判が追いついていない可能性も示唆される。

スッキリしない日々の中で、強さを誇示する選手が出ればモヤモヤも解消される。五輪の熱い瞬間を早く楽しみたい。

<中野浩一の目>

 <パリオリンピック(五輪):自転車/トラック>◇11日◇男子ケイリン準決勝、決勝◇サンカンタンアンイブリーヌ・ベロドローム

 日本勢16年ぶりに決勝の舞台に立った中野慎詞(25=日本競輪選手会)は、最終4コーナーで落車し、棄権となった。最終順位は4位タイだった。日本発祥の種目で、史上初の金メダルに挑んだがあと1歩及ばなかった。また、太田海也(25=日本競輪選手会)は準決勝で失格となった。

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 最終日はどっと疲れる1日だった…。何より、準決勝の太田海也の降格、失格判定だ。3着で勝ち上がったはずが、彼が何かしたか? 最終3コーナーは、外に膨れないように踏んでいただけだ。その内側の選手に何も影響していない。その後ろが勝手に内に突っ込んで落車したように国際映像では見えた。審判だけの映像があるんだとは思うが、スプリントでの警告を持ち越していたから、審判に目を付けられたか…。

 中野慎詞も、最終4コーナーで不運な落車。先に内に押し込まれたから、位置を確保するために返しただけ。これは相手が降格にはなったものの、あのまま踏めていれば銅メダルはあったかもしれないだけに惜しいレースだった。

 今回の審判は不備や不手際が目立った。順位や、タイムすらコロコロ変わったり。それなら発表しなければいい。せっかくの五輪の舞台なのに。だから判定にもどこか不信感を抱くことにつながる。

 今回、全体を見れば、男女スプリントと、女子団体追い抜きでも日本記録が出た。タイムは伸びている。私も周囲に「期待してください」と言い続けてきた。だが、それ以上の世界新記録ラッシュ。東京五輪でも感じたが、世界の進化するスピードを痛感した。

 もしかしたら、ルールも審判もこのスピードに追いついていないのかもしれない。海也のレースも、例えば線を増やして、真っすぐ走っているか見やすくする必要があるかもしれない。

 私も長年、自転車競技に携わっているが、これほどスッキリしない日々はなかった。今回3冠だった男子のハリー・ラブレイセン(オランダ)くらい文句なしに強くなれば判定どうこうや、モヤモヤもないだろう。五輪の表彰式で、早く「君が代」を聞かせてほしい。(日刊スポーツ評論家)