2人の強く深い絆。旅立つ松木玖生の姿を見て、安斎颯馬に芽生えた感情「新たなステージで、また一緒にサッカーがしたい」

AI要約

FC東京の若きキャプテン、松木玖生へのサポーターの愛情と尊敬が示される試合での感動的なシーン。

松木と共に過ごした選手、安斎颯馬の言葉から見える2人の絆と成長の過程。

青森山田高校でのエピソードや決勝戦で示した絆からうかがえる、彼らのサッカー人生と友情の素晴らしさ。

2人の強く深い絆。旅立つ松木玖生の姿を見て、安斎颯馬に芽生えた感情「新たなステージで、また一緒にサッカーがしたい」

 7月13日に開催されたJ1リーグ第23節・FC東京対アルビレックス新潟の一戦。

 5万7885人もの大観衆を飲み込んだ国立競技場のFC東京サポーターが陣取るゴール裏からは、この試合を最後に海外移籍のためにチームを離れるMF松木玖生に対して、何度もものすごい声量の個人チャントが歌われていた。

 FC東京が誇る21歳の若きキャプテン。2022年に青森山田高校から加入し、1年目からレギュラーとして2年半駆け抜けてきた松木に対するサポーターの愛情は計り知れないほど深い。だからこそ、その決断を尊重し、大きなチャントで感謝の気持ちを伝えていた。

 2-0で勝利を収めた試合後も、彼に心のこもったチャントを大合唱。その光景を感慨深そうに見つめる一人の選手がいた。青森山田高で松木の1年先輩にあたるMF安斎颯馬だ。

 今年、大学卒業を待たずして早稲田大からFC東京に加入した安斎は、高校3年間に加え、特別指定選手の期間を含めて1年半の時間を松木と共にした。

「もうお互い、特に話さなくても分かり合えている関係でした。特別指定期間も頼もしい存在であることに変わりはありませんでしたが、僕が正式にプロになってからのこの半年は、何気なく過ごしていたけど、ものすごく尊い時間だったなと思います」

 安斎のサッカー人生を振り返ると、常に松木は大きな存在だった。FC東京U-15深川からU-18に昇格できず、這い上がる覚悟を持って青森山田に来た時、松木は青森山田中の3年生ながら、すでにトップチームで躍動していた。

 

 2年生になり、シーズン当初は共にレギュラーとしてプレーしていたが、夏前から安斎がスタメンから外れることが増え、選手権でも不動の存在だった松木に対し、安斎は途中交代がメインになった。

「玖生の存在は大きな刺激になる。彼が常に情熱と覚悟を持ってプレーしているからこそ、自分もしっかりと自覚を持ってやらないといけないし、勝利に貢献できるようなプレーをしないと、将来につながらないと思っています」

 こう語っていた安斎は高校3年生になってサイドアタッカーとして不可欠な選手になると、ボランチの松木と抜群のコンビネーションを見せることになった。

 松木の前への推進力に対し、安斎のスピードと攻撃におけるポジショニングの良さ、アタッキングサードでの多彩な引き出しがマッチし、破壊力ある攻撃を構築。インターハイは新型コロナの影響で中止になってしまったが、選手権ではホットラインを形成。決勝進出の立役者となった。

 山梨学院との決勝戦。2-2のままPK戦にもつれ込むと、2人目に登場した安斎のキックが止められ、もう1人が外して5人目の松木まで回らずに無念の敗戦となった。この時、泣きじゃくる安斎のそばから松木がずっと離れずに、肩を抱き続けた光景を覚えている人も多いだろう。

「安斎を1人にさせたくなかった」と試合後に口にした松木の姿を見て、2人の絆は相当の深さがあることが伝わっていた。先にプロに進み、大活躍する松木の姿を、早稲田大でプレーしていた安斎は常に見ていた。

「本当に尊敬するし、玖生らしいなとも思う。だからこそ僕も早く同じステージに立てるように頑張らないといけない」