川﨑春花の復活優勝を支えた、下半身をダイナミックに使うニュースウィングをプロが解説【勝者のスウィング】

AI要約

苦しいシーズンを送っていた川﨑春花選手が、2シーズンぶりの優勝を果たした。過去の苦悩から這い上がり、改善したスウィングが功を奏し、安定したプレーを見せた。

スウィングの改善に取り組みながら、練習を重ねてタイミングを整えていた川﨑選手。プロセスを重ねた結果、4日間を通して1ボギーで終える安定したスコアを記録した。

勝利でポイントランクも13位まで浮上し、後半戦の活躍に期待が寄せられる状況となった。

川﨑春花の復活優勝を支えた、下半身をダイナミックに使うニュースウィングをプロが解説【勝者のスウィング】

「ミネベアミツミレディス」で2シーズンぶりの優勝を飾った川﨑春花。4打差のリードを守り、勝ち切ったスウィングをみんなのゴルフダイジェスト特派記者でプロゴルファーの中村修が解説。

22年シーズンの「日本女子プロゴルフ選手権」と「マスターズGCレディス」で優勝し、19歳でブレイクした川﨑春花選手でしたが、23年シーズンはポイントランク48位、今季は7度の予選落ちを経験するなど苦しいシーズンを送っていました。

昨年の夏頃には「このままゴルフを続けていけないないかな、このままダメになってしまうのかなと、スウィングすることさえも怖かった。人前でゴルフをするのが怖かった」と優勝会見では苦しく涙した日々を振り返りました。

ドン底から這い上がるために「スウィングを見直す」ことに取り組み、それまで手首を使ってインに引いて、「トップでヘッドの位置がわからなかくなっていた。まず最初はアウトに上げていくくらいの気持ちでトップの位置も高くして、しっかり左に振り抜くように意識してやっていました」と取り組んだスウィングの改善を話してくれました。

スタッツから見てみると、昨年のパーオン率は43位、FWキープ率は39位、平均パット(1ラウンド当たり)は42位となっていましたが、今季のパーオン率は16位、平均パット(1ラウンド当たり)は67位、FWキープ率は24位とショットの改善は見られるもののパットにも苦しんでいたことが見えてきます。

「ミネベアミツミレディス」のスタッツではパーオン率は2位、FWキープ率は7位タイ、平均パット(1ラウンド当たり)は15位タイと大幅に向上していました。「ニチレイレディス」から取り入れたクロスハンドのパッティングスタイルがなじんできたこともあり、シビアなパーパットやバーディパットをしっかりと決めていました。

それでは改善に取り組んで来たというスウィングを見てみましょう。背筋を伸ばし高く構えたアドレスの姿勢から早い段階で背中をターゲットに向け、深く高いトップを作っています。体格は華奢に見えますが今大会の平均飛距離は251.750ヤードで21位としっかりと距離も出ていました。

川﨑選手のスウィングを見て全身を使って飛び跳ねるように映ったファンも多かったのではないでしょうか。まさにインパクトでは左足のかかとが浮いてジャンプするように地面を踏み込んで下半身をダイナミックに使っています。

画像A右と画像B左の左足を見比べてみると、トップからの切り返しで左足かかとからつま先へと荷重していることが見て取れます。このときに荷重されている右足のかかとと左足のつま先を結ぶ線をレッスンの場では“ダイナミックエイミング”と呼び、その線がターゲットラインに対して右に向くことからクラブの軌道はインサイドアウトになると解明されています。

その逆で右足つま先と左足かかとに荷重されていると、クラブの軌道はアウトサイドインのカット軌道になります。カット軌道を改善したい場合は、足裏のどこに荷重されているかに意識を向けてみることも大切です。

話しを川﨑選手に戻しますと、250ヤードを飛ばす原動力になる下半身の使い方にプラスして、動きのタイミングがとても整っていることも安定したショットには重要です。さらに優勝争いのプレッシャーの中で「ミスショットもあったのでまだまだ」と本人は言いましたが、かなり安定していたように見えました。

スウィングの改善をしながら練習を積み重ねることでタイミングを整えて打つことはできるようになり、それを試合でも積み重ね、予選通過ラインから上位争い、そして優勝争いといくつもの段階を経て自分のものになっています。そのプロセスを重ねてきたことが、4日間を通して1ボギーで終えたスコアに現れていたように思います。

「今週は結果よりもやることに集中している、打つ前に風を頭に入れて」と、ターゲットに向かって打つことができていたと川﨑選手。この勝利でポイントランクも13位まで浮上し、後半戦の活躍にも注目していきます。

写真/有原裕晶