「好き勝手なことばかり書いたけど、誰も文句を言ってこない。その理由は……」デビュー30年、文豪レスラーTAJIRIが明かした業界の虚実、プロレスに学ぶ処世術

AI要約

30年以上にわたり活躍するプロレスラーTAJIRI氏が、新著『真 プロレスラーは観客に何を見せているのか』を上梓した。書籍は4年前の同名単行本の文庫化予定が大幅な改訂を経て完成したもので、プロレス界の表裏のタブーを暴いている。

プロレス界における今昔の変化についてTAJIRI氏は、マニア向けの試合が目立つ一方で一般層に響きにくくなっていると指摘。そして、業界内でもその問題を問題視する声が少ないことに懸念を示している。

TAJIRI氏は、今回の著書で理想論を語りつつも、現実がその理想を実現することは難しいかもしれないと述べている。しかし、プロレス業界や関係者の関心の欠如についても重要な視点を提供し、読者に考えさせている。

「好き勝手なことばかり書いたけど、誰も文句を言ってこない。その理由は……」デビュー30年、文豪レスラーTAJIRIが明かした業界の虚実、プロレスに学ぶ処世術

 1994年のデビュー後、世界最高峰のプロレス団体「WWE」からインディー団体まで、30年にわたり活躍を続けるプロレスラー・TAJIRI氏。昨年は小説を執筆するなど、「文豪レスラー」の異名を持つTAJIRI氏(54歳)が、今年3月に『真 プロレスラーは観客に何を見せているのか』を上梓した。プロレス界の表も裏もタブーなしで執筆された著書への思いとは。TAJIRI氏に聞いた。

 ── 『真 プロレスラーは観客に何を見せているのか』は、4年前に出した同名単行本の文庫化の予定だったのが、結果的に大幅な改訂になったと聞きました。

 TAJIRI 前書は、勢いのない当時のプロレスが、本来の姿だと勘違いしている人が多いと感じたことが執筆の動機でした。その認識は変わりませんが、この4年でプロレスの世界も僕自身も大きな変化があった。改めて読み返すと、このまま出しても喜んでもらえないという気持ちが強くなって、結局完全書き下ろしになりました。

 ──今のプロレスは昔と比べてどう変わったと思いますか? 

TAJIRI マニアだけを対象にしているプロレスが目立つと思います。このため一般層には響きにくいもの成り果ててしまっているのではないかと。極端に言えば僕が観ても、よくわからないし乗れない試合が多いので。ただひたすらエルボーの撃ち合いを延々繰り返したり、本来であれば決め技であるはずの大技の応酬を見せたりとか。 マニア向けの面白さも否定するつもりはありませんが、それが全てのようになってしまうのは、まずいような気がするんですよ。確かに少し前はマニア相手でなんとかなっていたけど、今はレスラーと関係者を食わせられるほど、マニアの数もいなくなっている可能性がある。だけど、そこを問題視している人が業界内に少ないのではないかと僕は感じているんです。

 ── かつての姿に戻って欲しいという願いから本書を書いた? 

 TAJIRI いえ。単に理想論を語りたいだけです。そもそも、多分もう戻らないだろうなと思っているんです。今回の本では今のプロレス業界にとってあまり聞き心地のよくない意見もかなり書いていているのですが、何も反論も業界内から出て来ないんですよね。もしかすると選手や関係者にとってもフロレスがどうなっていくかなど関心がないんでしょう。でも、そのこと自体も僕が読者に伝えたいことでもあって、その意味で反応がないことは予想通りだったと言えるかも知れません。