「人生で一番ボコボコにされた」「だれか止めて…」井上尚弥とのスパーを糧に…世界王者・武居由樹がいま明かす“モロニー戦、激闘の舞台裏”

AI要約

武居由樹(大橋)がボクシングで世界タイトルを獲得した3週間後のインタビュー。落ち着いた食事、減量の苦労、技術的な変化などについて語る。

試合中にストレート系パンチを使う意識が高まり、左ストレートやジャブを効果的に使用して勝利を収めた様子。

モロニーとの試合では主導権を握り、相手に「ガツーンと」したパンチを与えずに勝利した経験について話す。

「人生で一番ボコボコにされた」「だれか止めて…」井上尚弥とのスパーを糧に…世界王者・武居由樹がいま明かす“モロニー戦、激闘の舞台裏”

K-1チャンピオンからボクシングに転向して3年あまり。武居由樹(大橋)が5月6日、東京ドーム興行で世界タイトルを獲得した。不利予想も耳にする中、蓋を開けてみれば技巧派のWBOバンタム級王者、ジェイソン・モロニー(オーストラリア)を相手に12ラウンド判定勝ち。ボクサーとしての成長、12ラウンドの失速、話題を集めた「井上尚弥とのスパーリング」まで、新チャンピオンが大いに語った。(全2回の1回目/後編へ)

――チャンピオンになって3週間ほどが経ちました。この間、どのように過ごしましたか。

 完全オフは1週間で、あっという間の3週間でした。ちょっと太っちゃいましたね。予定通りではあるんですけど。5月いっぱいは自分なりに許してあげようかなと。

――トレーニング中は食べられなかったものを食べる。オンとオフの切り替えは大事だと思います。何が一番おいしかったですか。

 チャーハンです。町中華が大好きなんですよ。地元のお店に、速攻でチャーハンと餃子を食べに行きました。

――今回、バンタム級リミット53.5kgに落としたのはボクサーになって初めてでした。減量はひとつのポイントだったと思います。

 楽ではなかったですけど、ちゃんと落とせたかなと思います。八重樫さん(東トレーナー)に細かいところを聞いて、食事も気にして、脂肪を削って。K-1時代はけっこう適当にやってたんです。食べる量、飲む量をちょっと減らして2週間くらいで落としてました。でも、今回はそれでは落ちないと思ったので細かくやっていこうと。結果、スーパーバンタム級時代よりも気持ちは楽でした。東洋太平洋タイトルの防衛戦では、ギリギリまでつばを吐いて落としましたけど、今回そういうことはなかったので。

――がんばった分、町中華がたまらなくおいしかったと思います。

 いやぁ、うまかったですねえ(笑)。

――技術的なところもお聞きします。今回、八重樫トレーナーは「左ストレートが打てるようになった」と勝因を挙げていますが、見ていてもジャブも含めてストレート系のパンチがポイントになったように思いました。

 今まで外からのパンチしかなかったんですけど、真っ直ぐのパンチを使おうという作戦でした。最近は試合でも、スパーリングでも、外からのパンチだけではだんだん当たらなくなっていたんですよ。そういう事情もありました。

――「必要は発明の母」という言葉を思い出します。これまでは外からのパンチだけでも勝ててしまうから、ストレート系が大事だと言われても、あまり使うことができなかったということですね。

 そうです。それがなくても勝てた、というのはあったと思います。でも今回、モロニーとの試合が決まったときに「今のままでは勝てないな」という危機感を抱いて。だから工夫もしたし、アドバイスも聞けるようになったと思います。今までの自分はいきなり飛び込んで、という感じだったので、前の自分だったらやっぱり勝てなかったと思います。

――ジャブと左ボディの組み合わせが効いていました。

 思った以上に手が出たし、ジャブは当たりました。ただ、予想していた通り、試合中は「うまく当てさせてくれないな」という印象でした。左ボディブローも当たってはいるんですけど、深く刺さっている感じはなかったです。

――いずれにしても武居選手が主導権を握り、試合を進めました。途中でモロニー選手が出てきましたけど、どのように感じていましたか。

 効いたパンチはなかったし、「これをもらったらヤバイ」という怖さはありませんでした。ガツーンというのはなかったので。