“追試”連続に葛藤「ラストチャンス」 育成5年の23歳左腕…オリにまた現れた救世主

AI要約

新人投手の佐藤一磨がプロ初登板プロ初先発で5回1安打無失点の好投を見せ、プロ初勝利を挙げる。

苦労を乗り越え、デビュー戦での成功を喜びながら、自信を深める佐藤は次の試合に向けて気持ちを引き締める。

佐藤はファームでの成績を胸に、大舞台での活躍を通じてチームに貢献し、スポーツマンシップを示す。

“追試”連続に葛藤「ラストチャンス」 育成5年の23歳左腕…オリにまた現れた救世主

■オリックス 4ー1 巨人(9日・東京ドーム)

 苦労を重ねた“新顔”が、デビュー戦で大仕事をやってのけた。オリックスの佐藤一磨投手が9日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初登板プロ初先発。5回1安打無失点の好投で、プロ初勝利を掴んだ。バクバクの胸中を押さえながら73球を投げ切った。

 苦悩を乗り越えて大舞台で羽ばたいた。「しっかり腕を振って、自分の球を投げられたかなと思います。試合前の緊張に比べたら、マウンドに上がった時は冷静になれていた。楽しかったです」。キラキラとした目で、遠くを真っすぐ見つめた。

 佐藤は2019年の育成ドラフト1位でオリックスに入団。今季が5年目の23歳左腕は、前日8日に支配下選手登録されたばかりだった。背番号も「001」から「93」に変更。念願の2桁番号を勝ち取り、デビュー戦を迎えていた。

「ずっとファームで(状態が)良かったので。そこは変えずに『1軍だから』どうということは気にせず。ずっと今まで通りのルーティンで、自分に言い聞かせていました。(ベンチで)宗さんがずっと隣にいてくださって『いいぞ、いいぞ』と声をかけてもらったので、本当に感謝です」

 初回1死から2番・ヘルナンデスに左中間二塁打を浴びるも、その後は5回まで巨人打線にヒットを許さなかった。5回を投げ終えると3塁側ベンチで厚澤投手コーチとガッチリ握手を交わした。「よく頑張った。あとは応援していてくれ」と伝えられた。救援陣の奮闘を見守ると、ゲームセットの瞬間に笑顔が弾けた。オリックスでの育成ドラフト出身選手の初登板初勝利は史上初だった。

 満員の日曜日、憧れの東京ドーム、相手投手は巨人・菅野……。普段なら羨望の眼差しを送る条件だが、この日は自分のマウンドさばきにだけ集中した。初体験の大歓声は「ベンチで聞いているよりも聞こえないというか……。もちろん、集中しているので。マウンドにいる方が小さく聞こえる感じでした」と“ゾーン”に入り込んでいた。

 190センチの長身から繰り出す直球に、大きく曲がるカーブ、揺れるフォークなどを織り交ぜるスタイルで躍動。昨季はファームで19試合に登板して8勝3敗、防御率3.94。ウエスタン・リーグ最多勝のタイトルを獲得し「(2軍の)最多勝を獲れたということと、次の年(今年)もファームで抑えられた(4勝2敗、防御率1.99)のは自信になった」と充実の色をにじませた。