パリ五輪目前でサプライズ復帰!! 大きな覚悟で“最終選考”に臨む鹿島MF松村優太「あいつならいつ走ってもボールが出てくる」荒木遼太郎とも久々共演へ

AI要約

松村優太が五輪代表復帰に向けた意気込みを明かす。

制限された出場機会の中、国立戦後に五輪選考入りを語る。

アメリカ遠征を控え、チャレンジャー精神で覚悟を示す。

パリ五輪目前でサプライズ復帰!! 大きな覚悟で“最終選考”に臨む鹿島MF松村優太「あいつならいつ走ってもボールが出てくる」荒木遼太郎とも久々共演へ

[6.1 J1第17節 鹿島 3-2 横浜FM 国立]

 鹿島アントラーズで出場機会が限られている中、本人としても驚きのU-23日本代表復帰だった。しかしどんな形であれ、パリ五輪への絶好のチャンスが巡ってきたのも事実。最終選考にあたるアメリカ遠征に向かうMF松村優太の胸には大きな覚悟が宿っていた。

「正直、入るとは思っていなかった。でも入ったことには意味があると思う。自分の立場、立ち位置は自分が一番よく分かっているし、代表チームで求められていることはもちろん理解している。入ったからには自分がその期待に応えるだけ。100%できることをやりたい」

 パリ世代屈指のウインガーとして知られる松村だが、五輪イヤーの今季は苦しい日々を過ごしてきた。

 新たにランコ・ポポヴィッチ監督が就任した鹿島でポジション争いに苦戦し、J1リーグ戦の先発出場はいまだなし。途中出場も7試合合計100分間ほどで、主戦場は3回戦敗退を喫したルヴァンカップだった。その結果、今年に入ってからはパリ五輪選考の序列も大きく低下。3月の国内合宿、4月のAFC U23アジア杯はいずれもメンバー入りを逃していた。

 ところがそんな状況で迎えた5月30日、パリ五輪前最後の活動となるアメリカ遠征のU-23日本代表メンバーが発表され、松村はそこに名を連ねた。突然巡ってきた昨年11月以来の復帰。直前のJ1リーグ戦で8試合ぶりに出番を掴んではいたが、鹿島での状況が大きく変わったわけではない。欧州組の招集交渉が難航していることに加え、U23アジア杯主力のMF山田楓喜(東京V)がコンディション不良で外れたことも影響しての選出とみられた。

 そんな松村に1日の第17節・横浜FM戦後、代表招集への受け止めを聞くと、やはり「正直、入るとは思っていなかった」という冒頭の言葉が返ってきた。また「(五輪メンバーに)入ったら奇跡じゃないかくらいで構えている」ともいい、喜ばしい代表復帰に至った現状を冷静に受け止めているようだった。

 もっとも、そうした落ち着いた現状認識とは裏腹に、言葉の端々からは高いモチベーションをたぎらせた。

「もちろん呼ばれたからには(五輪を)目指している。いろんなポジションでも準備するし、鹿島での立ち位置を考えた中でも、いろいろと得るものしかない合宿だと思っている。2試合のトレーニングでもそうだし、久々に会うやつらもいる。今までのキャリアを振り返っても、代表で成長してきたという自信があるので頑張っていきたい」

 こうしてチャンスを掴んだからには、自らが生き残っていくためのイメージも具体的にふくらませている。五輪本大会の戦いを見据えると、松村のストロングポイントであるスピードと推進力は稀有な能力。落選に終わったU23アジア杯の戦いもチェックしていたという松村自身、その点は深く認識している。

「スピードという武器は誰もが努力して伸ばせるものではない。持って生まれたものだと思うし、代表チームを見てもそれを武器にしている選手がなかなかいなかったのが選出理由の一つだと思っている。もちろんアジア杯の試合はチェックしていたけど、自分だったらここでもう少し推進力をもたらせられたなとも思いながら見ていた。それに五輪本戦は劣勢に回ることが多いと思う。W杯もそうだったし、そこでひっくり返せるのはスピードだと思う」

 松村の言葉どおり、カタールW杯では前田大然や浅野拓磨、五輪では12年ロンドン大会の永井謙佑と、世界大会でスピードを売りにする選手が活躍を見せた例は多い。一方、五輪は選手登録枠が18人と少なく、ジョーカー的な起用を想定した選考が難しいという課題もあるが、そこは本職であるウイングだけでなく複数ポジションを担うことで乗り越えていく姿勢だ。

「この前、(大岩剛)監督が試合を見に来ていて少し喋ったけど、いまは前目のポジションならどこでもやるイメージを持っている。ウイングもそうだし、一番前もそうだし、インサイドハーフもそう。代表では全部やったことがあるので、それができることも呼ばれた理由だと思う」。ビハインドの局面では激しいプレッシングで主導権を取り戻す展開も想定される中、どのポジションからでのその役目を担っていく準備はできている。

 その上でウインガーとして結果を出せれば理想的だ。U23アジア杯ではFW佐藤恵允(ブレーメン)が調子を落とし、FW平河悠(町田)が台頭を果たしたが、本職ストライカーのFW藤尾翔太(町田)もウイング起用をこなすなど絶対的な主軸は不在。松村は「ウイングでスピードやドリブルという武器はあまりないものだと自分でも思っているので、そこは忘れず、どこで出ても準備したいと思う」と意気込む。

 またもう一つ松村にとってポジティブに働きそうな要素が、鹿島同期加入のMF荒木遼太郎(FC東京)の急台頭だ。

 荒木は松村が不在だった3月活動から代表に復帰したため、今回のアメリカ遠征が久々の再会。松村は「楽しそうにやっているのでいいんじゃないですか(笑)。あいつは自由にやるのが一番だと思うし、鹿島でなかなかうまくいかなかったのが、自由にやることによってうまくいっていると思う」と活躍に目を細めつつ、「久しぶりに一緒にプレーするのでそこは一つ楽しみではある」と共演に期待を寄せる。

 共にプレーする機会があれば、互いに活かし合うイメージもできている。「あいつが周りに寄せるのはないと思うので(笑)、どちらかというと僕らが活かされる側に回りますよね。いまは(柴崎)岳くんが帰ってきたけど、それまでは唯一『あいつならいつ走ってもボールが出てくるな』と思っていたし、目が合うのはアイツだった。代表でも調子がいいし、楽しみなところではあります」

 そうした迎えるアメリカ遠征では、五輪出場国のU-23アメリカ代表と非公開・公開で2度の対戦を控える。選手たちにとってはパリ五輪の18人枠に入るため、またチームとしては本大会に向けた戦術浸透をさらに深めていくためと、自身の武器も周囲との連係も一気に試される最後のサバイバルとなる。

 その中で松村は「一番下だと思っているので、失うものはない」とチャレンジャー精神を持って挑もうとしている。「最後の活動で入れたということはポジティブに捉えているし、期待の表れだと思っているのでその期待に応えたい。十分に立場、立ち位置は理解しているので、精一杯できることを必死こいてやりたいなと思います」。まずはあふれんばかりの覚悟をぶつける構えだ。