【阪神】ブラジル生まれ新通訳伊藤ヴィットル氏「気持ち分かるのが1番」元選手から転身した理由

AI要約

若手通訳の伊藤ヴィットルさん(29)が、阪神で充実の毎日を送る背景には、ブラジル出身で野球を愛する彼の苦労と経験が活きている。

若干15歳で来日し、野球に熱中するも言葉の壁に苦しみながらもプレーを続け、引退後は通訳に転身した彼は、外国人選手の言葉を伝えるだけでなく、生活面のサポートも行う使命感を持っている。

現在はドミニカ共和国出身の2選手の通訳を務める伊藤さんは、4カ国語を操り、彼自身の苦労が生かされている。チームでの絆も強く、期待の投手たちをサポートする日々を楽しんでいる。

【阪神】ブラジル生まれ新通訳伊藤ヴィットル氏「気持ち分かるのが1番」元選手から転身した理由

<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム>

 少年時代の苦労が、いまにつながっている。今季から阪神の通訳として伊藤ヴィットルさん(29)は、新天地で充実の毎日を送っている。22年までは社会人野球の日本生命で内野手としてプレー。選手から通訳への珍しい転身を果たした。

 「外国人が日本に来ると、最初はいろんなことで苦労する。この仕事をしていたら、やっぱりそうだなと思う。ちょっとでも、力になりたいなと思ってやっています」

 伊藤さんは祖父が日本人の日系ブラジル3世。生まれてから中学までを、ブラジルで過ごした。バレーボールやサッカーがメジャー競技とされる同国。だが父や兄の影響も受け、熱中したのは野球だった。高校に進む際は、野球部がブラジルとのつながりを持っていた埼玉・本庄一高からスカウト。兄も進学していたこともあり、来日を決断した。

 15歳で始まった異国での生活。初めは日本語も全く話せず苦労が絶えなかったが、少しずつ言語を習得していったという。卒業後は共栄大でプレーを続け、16年の4年時にはWBC予選でのブラジル代表入りも果たした。

 そのまま日本生命でプレーを続け、22年に引退。23年は1年会社での勤務を続け、転機となったのは、ブラジル代表として共闘した仲間からの助言。ヤクルトなどでプレーし、巨人での通訳も務めた金伏ウーゴ氏(35)からのものだった。

 「『僕たちはブラジルから来た時に結構苦労してるから。そういう子たちの気持ちが分かるから、面白いよ』と言われて。自分たちも経験しているから。そこで、通訳に興味が出てきたんです」

 外国人選手の言葉を伝えることだけでなく生活面のサポートも行う通訳の仕事。続けて来た野球に携われることもそうだが、日本に来た時の苦労を生かせる仕事に、自然と引き寄せられていった。

 現在は主に、ドミニカ共和国出身のアンソニー・マルティネス投手(24)、ホセ・ベタンセス投手(24)の通訳を務める毎日。今季から育成契約で加入し、慣れない生活を送る2人だ。

 「2人の気持ちが分かるのが一番かもしれないです。何もしゃべれないから、コンビニでも買い物ができない。自分も日本に来た頃、本当にそれが嫌だったので。できるだけ、そういうところで、前もって困らないようにやっています」

 伊藤さんも含めて、3人ともチームに加入したのは今季から。「仲が良すぎて、たまに困ります。3人でずっと一緒にいるので、違う仕事ができないです」と笑って明かした。スペイン語、英語、ポルトガル語、日本語の4カ国語を操る伊藤さん。独特だというドミニカ人のスペイン語に当初は苦労したというが「今は全然大丈夫です」という。

 自身の経験を生かし、期待の両右腕を公私で支えている。【阪神担当=波部俊之介】