物理学的にもっともムズかしい迷路、ゴールできる?

AI要約

右手(もしくは左手)を壁につけながら歩くことで迷路を解く方法がある。この激ムズ迷路はハミルトン閉路という考えに基づいて構築されており、物理学的にも難解なパズルとされている。

迷路製作者の物理学者Felix Flicker氏が準結晶を用いてこの迷路を構築し、その形状の複雑さに驚いている。準結晶は通常の結晶と異なり、左右非対称で非反復型の複雑な構造を持つ。

準結晶は非常に珍しい状態であり、自然に構成されるのは稀な状況に限られる。この研究は科学のさまざまな分野に活用できる可能性があるとされている。

物理学的にもっともムズかしい迷路、ゴールできる?

迷路の必勝法は何か。それは、どんなに回り道になっても右手(もしくは左手)を壁につけたままで歩くこと。時間はかかってもかならずゴールできます。それにしても、とんでもない時間がかかりそうなのがこれ。物理学的にもっとも難解なパズルですって。

この激ムズ迷路は、「ハミルトン閉路」という考えで構築されています。ハミルトン路とは、グラフ上の全ての頂点を 1 度ずつ通る路のこと(Wikipediaより引用)。同じ考えに、ナイト・ツアーというものがあります。これは、チェスボード上のナイトを移動させ、64マス全てを一回ずつ通過させること(Wikipediaより引用)。

研究チームは、Ammann-Beenkerタイリングと呼ばれる平面図と、このハミルトン閉路を作るアルゴリズムでこの迷路をうみだしました。

迷路製作者、もとい論文の主な著者であるブリストル大学の物理学者Felix Flicker氏は、プレスリリースにてこう語っています。「構築したラインの形状を見ていたら、非常に複雑な迷路が形作られていることに気付いたのです。迷路に続く迷路、そのサイズは指数関数的に大きくなり、数も無限です」

物理学的にいうと、この激ムズ迷路は、ハミルトン閉路を準結晶として集合させたものだそうですが…。

準結晶とはとても珍しい状態。通常、結晶は同じパターンを繰り返す(反復的)な構造をもちますが、準結晶にはそれがありません。左右非対称で非反復型でとても複雑な作りになっており、その姿はまるで魔術の印のよう。

準結晶が自然に構成されるのは非常に稀な状況においてのみ。ダイヤモンドよりも硬いミネラル、ロンズデーライト(別名六方晶ダイヤモンド)で発見されたこともあります。2021年には、人工鉱物トリニタイトでも発見。

Flicker氏はこう語っています。「準結晶には、驚くほどシンプル、特別なケースがあると示すことができました。ゆえに、この場合は、一見不可能に見える問題にとっかかりを与えたのです。これは、科学のさまざまな分野に広がる実用的な目的にも使えるかもしれません」

一般の人からしたら、複雑なタイルの模様のような激ムズ迷路。ただ、これを科学的に見ると、望遠鏡がターゲットをスキャンするなどの顕微鏡画像のスピードや、物理問題に、ハミルトン閉路が活用できるのだといいます。

迷路の研究論文はPhysical Review Xにて公開されています。