美の探究者 その感性と哲学(4) 一歩引いて自分を見つめ直す <久山奈津>

AI要約

自然の中での体験が自分の客観的な視点を変えるきっかけとなったエピソード。

都会での生活とは異なる大自然の中での生き方に学びを感じ、自己を客観的に見つめるようになる。

自然の摂理を意識し、個性を尊重することの重要性を理解し、広い視野で物事を捉えるようになった。

美の探究者 その感性と哲学(4) 一歩引いて自分を見つめ直す <久山奈津>

 読者のみなさんは自分を客観的に見ることはできていますか? 私は以前、自分を客観視することができていませんでした。

 そんな状況を変えるきっかけとなったのが、屋久島(鹿児島県)の大自然の中で農園を営む80代のおじいちゃんとの出会いです。

 ある日、彼が入院したと聞いたので、畑の手伝いを申し出たのです。そこは木や雑草が生い茂り、まるでジャングルのよう。日焼けしないように顔から首をタオルでぐるぐる巻きにし、蛾や今まで見たことのない虫が飛び交う中での作業です。虫嫌いの私にとっては本当に過酷で、カマキリの卵を発見した時には気を失いそうになりましたね。

 彼が退院してからも時々、畑を手伝うようになり、自然の中で生きるとはどういうことか、少しずつ理解できるようになりました。

 都会でバリバリ働いていても、いざ大自然の中に放り出されると、あまりにも自分が無力であるかを痛感します。いかに人間がちっぽけであるかを思い知らされるのです。

 ときに「都会で何不自由なく生活してきた人が、本当にここで生きていけるのか?」と言われ、ムッとすることもありましたが〝郷にいれば郷に従え〟と自分に言い聞かせてきました。

 しかし、この環境に馴染んでいくにつれ、都会で戦い続ける道しか知らなかった私は、全身にまとった鎧を脱ぎ捨てて生きていくという思いもよらない道があることを知ったのです。

 そこからは都会では常に戦闘モードだった自分を一歩引いて客観的に見つめられるようになり、心に余裕も出て来ました。あれだけ嫌いだった虫に対しても、生き物すべてにつながりや意味があると思えるようになり、自分目線ではなく、全体の中で自分はどうあるべきかの自然の摂理を意識するようになったのです。

 スタッフに対しても、彼女らを制限の中に閉じ込めず、個性を尊重することで、全体としてのサロンの個性が増幅すると思えるように考えが変わりました。

 屋久島での学びは私に客観的な視点を与え、広い視野で物事を捉えることの大切さを教えてくれました。彼との交流から得た学びは、今後の人生でも大切にしていきたいと思います。

(ル・キヤ代表 久山奈津)