熊本県、「公務員獣医師」確保に懸命 受験者定員割れ、内定辞退も 修学資金給付、幅広い職務をPR

AI要約

熊本県は公務員獣医師の確保に取り組んでおり、修学資金給付事業を通じて大学生の興味を引く取り組みをしている。

獣医師免許取得後の進路において、公務員獣医師の割合は全体の11%にとどまり、県内の公務員獣医師の募集も難航している。

県の公務員獣医師の待遇は民間と比較して劣っておらず、職員には多様な業務や特別手当が付与される。

熊本県、「公務員獣医師」確保に懸命 受験者定員割れ、内定辞退も 修学資金給付、幅広い職務をPR

 熊本県は公務員獣医師の確保に取り組んでいる。大学生らに返還が免除される修学資金給付事業をアピール。家畜の診療にとどまらず、伝染病予防や食品衛生、動物愛護といった幅広い職務内容の周知にも努めている。

 農林水産省によると、全国で毎年千人程度が大学の獣医学部を卒業し、獣医師免許を取得。2022年度の進路は主に動物病院などでペットを診療する「小動物診療」が47%を占める。NOSAI熊本(県農業共済組合)などに所属して家畜を診療する「産業動物診療」が12%。行政組織の一員である「公務員獣医師」は11%にとどまる。

 県は23年度、公務員獣医師として23人を募集したものの、受験したのは13人。内定を辞退した受験者もいて、最終的な採用は8人だった。県の公務員獣医師の総数は140人余り。3分の1を、退職したOBの再任用や会計年度任用職員が占めている。

 「獣医師として、民間の動物病院などでペット診療をやりたい学生が多いのだろう」と県健康危機管理課の弓掛邦彦課長。公務員獣医師の待遇については「民間と比べ、見劣りするわけではない」と説明する。

 県の場合、獣医師職に就いた職員には特別手当が15年間付く。新卒の年収は約460万円と、事務職より100万円ほど高い。

 県は16年度に修学資金給付事業を創設し、35人が活用。12人が県の公務員獣医師として活躍しており、こうした実績を学生らにアピールする考えだ。

 県の公務員獣医師の勤務先は多様で、各地域の保健所、食肉衛生検査所、家畜保健衛生所などに配属される。獣医師でもある県健康危機管理課の松本辰哉課長補佐は「選択肢が多いのも魅力。やりがいのある業務ばかりだ」と話している。(樋口琢郎)