富岡に来て良かった…ワタガシ感謝の13年 バド・ジャパンOP準々決勝敗退、最後の舞台で有終飾れず

AI要約

2連覇で有終の美を飾ることはできなかったが、ペアとして最後の舞台で感謝の思いを表した。

東野有紗&渡辺勇大組の13年間の歩みを振り返り、混合ダブルスの人気を押し上げた功績が称賛された。

富岡一中時代からの絆を感じさせる2人の最後の試合には多くの観客が集まり、感謝と誇りが溢れた。

富岡に来て良かった…ワタガシ感謝の13年 バド・ジャパンOP準々決勝敗退、最後の舞台で有終飾れず

 2連覇で有終の美を飾ることはできなかったが、ペアとして最後の舞台で感謝の思いを表した。23日のバドミントンのジャパン・オープン混合ダブルス準々決勝で敗れた渡辺勇大(27)、東野有紗(28)組=BIPROGY、富岡高卒=は、富岡一中で出会い、ペアとなり13年を過ごした。日本では人気の低かった混合ダブルスをリードし、新風を吹き込んだ「ワタガシ」の戦いが幕を閉じた。

 「きょうで終わりが信じられない。本当に勝てない時期も一緒に乗り越えて、いい景色を見させてもらった」。東野は2人で歩んだ13年間を総括した。続けて渡辺は「ダブルスなので偶然ペアが決まったり、いろんな運を持っていた。この2人だからできた」と感慨深そうに振り返った。

 富岡一中時代、特定のペアがいない東野と、腰のけがで本調子ではなかった1学年下の渡辺の「余り者同士」でペアとなった2人。結成の裏側には、世界を見据えた「富岡」の取り組みがあったという。

 中学、高校時代に2人を指導した大堀均さん(56)=トナミ運輸ヘッドコーチ=はこう回顧する。「富岡で指導していたインドネシア人コーチが『なぜ日本は五輪種目なのにミックス(混合ダブルス)に力を入れないんだ』と。その一声で、中学からペアをつくって大会に出そうという話になった」。そのかいあって、早くからペアとなった2人が、まさに先駆者となり、時代を塗り替えていった。

 日本ではまだ人気が低く、「全日本総合選手権では決勝前に観客が帰ってしまうような時もあった」(東野)という混合ダブルス。2018年に100年以上の歴史を誇る全英オープンを日本勢で初制覇すると、21年東京五輪では日本勢初のメダルを獲得し、パリ五輪では2大会連続のメダル獲得も達成した。これまでに2人が打ち立てた”日本勢初”は数知れず、混合ダブルスを世界基準に押し上げ、人気の火付け役となった。

 最後の試合となった準々決勝は平日午後5時前の開始となったが、多くの観客がスタンドを埋めた。「『ワタガシ』の試合を見るまで帰れない」と、保護者にそう訴える子どもの姿もあった。「歴史をたくさんつくってきたし、レールを伸ばしてこれたと思う」。渡辺の言葉には混合ダブルスを引っ張ってきた自負が感じられた。

 大観客に見送られ会場を後にした。「富岡に来て良かった」。そう話していた2人はお互いに「ありがとう」と感謝の言葉をかけ合い、締めくくった。(佐藤智哉)