能登地震被災の墓石修復、お盆間に合わず 富山県内石材店

AI要約

能登半島地震で富山県内の墓石に被害が相次いだことにより、修復作業が追われている状況。職人の手が足りず、お盆までの完了が難しい状況もあり、被災者が諦める声もある。

地震被害が大きかった氷見市や高岡市では多数の墓石に被害が見られ、修復作業が必要となった。液状化現象による被害も報告されている。

石材店が数千件の修復依頼を受け、手が回らずに修復が遅れる状況。個人事業主も同様で、一部の所有者は墓じまいを選択する事態も発生している。

能登地震被災の墓石修復、お盆間に合わず 富山県内石材店

 能登半島地震で富山県内の墓石にずれや倒壊などの被害が相次ぎ、石材店が修復作業に追われている。発生から半年以上が過ぎたものの、想定以上の件数で職人の手が回らず、中には依頼を受けた約3千件のうち、修復を終えたのは約6割にとどまる業者もある。お盆の墓参りまでの完了を求める要望が多い中「間に合わない」との見方があり、被災者からは「今年は仕方ない」と諦めの声も漏れる。

 地震被害が大きかった氷見市。市環境保全課によると、7月上旬に市営墓地を確認した際、村上墓地(朝日丘)で200件以上、東原墓地公園(北八代)で40件ほどの墓石に被害があった。高岡市では1月上旬時点で、市二上霊苑(城光寺)で82件の被害を確認した。

 北陸3県で店舗を運営する山岡石材工業(高岡市福岡町下老子)では、能登半島地震が発生した翌日から修復依頼の電話が殺到し、2月までに約2千件を受注した。氷見市や高岡市、石川県から多く寄せられ、墓石の上部のずれや落下、倒壊などの被害が目立った。液状化現象が起きた地域では基礎ごと傾いた墓石もあったという。

 約20人の職人がフル稼働し、県外の石材店に協力を要請して態勢を強化したが、現在までに受けた約3千件の依頼のうち、修復を終えたのは6割ほどにとどまる。最近はお盆が近づき「いつ直るか」といった問い合わせが増えている。

 同社の前田尚也常務取締役(49)は、当初はお盆までの完了を見込んでいたとし「想定以上の数になった。一刻も早く直したいが、お盆に間に合わないものも多い」と説明する。

 個人事業主も頭を悩ませる。浦島石材工業(小矢部市石動町)は、約200件の依頼を受け付けた。代表の浦島透さん(61)は、1人で多い日に10件を回るなど急ピッチで対応してきたが、半分しか終わっていないという。「昔からの付き合いのお客さんが多く、何とか早く直したいが追いつかない」と肩を落とす。

 氷見市姿の女性(70)は地元の寺にある墓石の灯籠が倒れ、業者からお盆に間に合わないと言われた。「早く元通りにしてほしいけど、周りの墓もひどく壊れている。今年ばかりは仕方ない」と話した。

墓じまいの決断も

 能登半島地震で修復不可能な状態になった墓石の所有者の中には、跡継ぎがいないことなどを理由に墓じまいを決断する人もいる。

 氷見市姿の長福寺では、約100基の墓石の大半が被害を受けた。元々門徒から墓じまいに関する相談が寄せられており、地震後は「お金をかけて建て直しても、管理する人が今後いない」などの声があった。

 こうした状況を受け、同寺は7月上旬、姿地区にゆかりがある人を対象に、寺が遺骨を預かって供養や管理を担う永代供養墓を整備した。

 既に2組が契約しており、住職の北鹿渡(きたかど)文照さん(76)は「一つの選択肢として助けになればいい」と語った。