バス停をヒト・モノ集まる「モビリティハブ」に 館山でNPOが実験へ(千葉県)

AI要約

館山市の西岬地区で始まるバス停を地域のコミュニティーづくりに活用する試みについての実験が紹介された。

実験ではバス停を「モビリティハブ」として活用し、地域の人々や観光客が集まる場をつくることが目的とされている。

この取り組みは国土交通省の支援を受けて行われ、バス路線の活用策として全国的に展開する可能性もある。

バス停をヒト・モノ集まる「モビリティハブ」に 館山でNPOが実験へ(千葉県)

過疎地のバス停を地域のコミュニティーづくりに活用できないか――。そんな実験が6月下旬から館山市の西岬地区で始まる。バス停を「モビリティハブ」と呼ばれる「ヒト」と「モノ」が集まる拠点にする試みだ。関係者は、今回の実験結果をみて、将来的には地方のバス路線の活用策として、全国的にアピールすることも視野に入れている。

同市塩見にある古民家「ゴンジロウ」を拠点に、建築やまちづくりの研究をしている東京大学大学院の岡部明子教授の研究室が主体になって運営しているNPO法人「ゴンジロウ」と、事業開発のコンサルティング会社「AMANE」(東京)を中心に、運営や実施に当たる。

計画では、JRバス関東が運行する路線のバス停を小型の電気自動車で巡る。車の荷台に積んだカセットコンロを使ってコーヒーなどの飲み物を地域の人たちに振る舞い、地元で採れた野菜などを売る。この他、路線バスで市中心部から新聞を運び、住民に最寄りのバス停まで取りに来てもらったり、集まった人らで朝のラジオ体操をしたり、といった試みも盛り込む。バスで運ぶ新聞は房日新聞社が提供する。

実験を行う背景には、利用者の減少や運転手不足から、地方を中心にバスの運行本数の減便や路線の休止が進む状況がある。今後も路線バスの減便が進むことを見越し、運行間隔が延びて「空き時間」が増えるバス停に人が集まる「仕掛け」をつくり、地元の人だけでなく、通り掛かった観光客なども立ち寄れるようにして、コミュニティーを育む場にするのが実験の大きな目的だ。併せて、バス停に人を集めることでバスの利用を促すことも目指す。また、新聞を路線バスで読者宅の近くに運ぶ試みは、新聞社や新聞販売店にとっても戸別配達の負担が軽くなる利点がある。

今回の実験は、国土交通省の「地域交通共創モデル実証プロジェクト」に採択され、補助金を受けられることが決まった。

実験は、7月下旬までと9月23日~10月13日の2期に分けて行う。6~7月の1期は、古民家ゴンジロウ近くの県道沿いにある安房塩見のバス停で、期間中の水曜日と土曜、日曜日の朝に行う。実験を始めるのに当たり、同NPOは「朝のラジオ体操ついでに房日新聞取りに来ませんか?」とのタイトルを付けたチラシをつくり、西岬地区で実験への回覧板で周知した。

実験を前に、同NPO事務局の正林泰誠さん(25)が、6月20日午後、安房塩見バス停前に小型電気自動車を出し、コーヒーを用意。事前に呼び掛けなどはしていなかったにもかかわらず、1時間ほどの間に買い物帰りや近所の人が10人ほど立ち寄り、にぎわった。

正林さんは「全国各地でバス路線の維持や新聞の戸別配達が厳しくなっている。地域の人と物が集まる場を整備すれば、住民が助け合う形で課題を解決できるのではないかと考えた。全国どこでも取り組めるような形をこの実験で見つけたい」と話している。