リニア工事着手巡り、静岡県とJRが行政手続き協議 国加えた実務会合も開始

AI要約

静岡県内のリニア中央新幹線工事に関する環境保全措置の実施状況を確認する国土交通省モニタリング会議が開催された。県とJRが行政手続きに関する協議を始め、実務責任者レベルの会合も初開催された。

行政手続きに関する協議は河川法、盛り土規制条例、自然環境保全条例に基づく許可手続きに焦点を当てて行われており、JRが要対策土を盛り土する計画についても議論が行われている。

JRの開業断念や工事期間の見通しなど、会合で議論された内容も報告され、今後の協議に向けた進捗状況も確認された。

リニア工事着手巡り、静岡県とJRが行政手続き協議 国加えた実務会合も開始

 静岡県内のリニア中央新幹線工事を巡り、JR東海が取り組む環境保全措置の実施状況を確認する国土交通省モニタリング会議(座長・矢野弘典ふじのくにづくり支援センター理事長)の会合が12日、島田市役所で開かれ、事務局の国交省は、県とJRが工事着手に必要な行政手続きに関する協議を始めたと明らかにした。両者の協議の進展を図るために矢野座長が2月の初会合で提案した県、JR、国の3者による実務責任者レベルの会合を同日に初開催したことも報告した。

 行政手続きに関する協議は河川法と県盛り土規制条例に基づく許可手続きのほか、県自然環境保全条例に基づく協定に関する内容。県はJRの環境保全措置について、大井川流域市町などで構成する大井川利水関係協議会を含めて合意した後、工事を認めるための行政手続きに入る工程表を示している。

 会合後、取材に応じた森貴志副知事は「(県がJRと対話すべき課題とする)28項目の解決が着工を認める前提という考えは基本的には変わらないが、(行政手続きの)議論は同時並行で行う」と説明。28項目の解決の前に行政手続き上の許可を出すことは「考えられない」とした。

 盛り土規制条例の協議では、JRが大井川上流部の藤島沢近くに自然由来の有害物質を含む「要対策土」を盛り土する計画について議論していると説明した。森副知事は「現在の計画では認められない」と従来と変わらない姿勢を示しつつ、藤島沢に要対策土を置くことを前提に計画内容を協議していることを示唆した。JRの宇野護副社長は取材に、「だめだとだけ言われていた1年ほど前と比べると、話を聞いてもらっている状況」と話した。

 実務責任者による協議はモニタリング会議に先立ち、JR東海静岡支社で約40分間にわたって非公開で行われ、森副知事、宇野副社長、国交省の岸谷克己鉄道局担当技術審議官が出席した。岸谷審議官は行政手続きの進捗(しんちょく)状況などを確認したとし、「小異を捨てて大同につくというスタンスで引き続き協議を進める」と述べた。

 3月のモニタリング会議の前回会合で、JRが2027年リニア開業断念と静岡工区工事に約10年かかるとの見通しを表明。5月に任期途中で辞職した川勝平太前知事は「一区切り」と、辞職決断の理由に挙げた。前知事辞職後、今回が初めての会合だった。

 (政治部・尾原崇也)