現役東大生に聞いてみた「学費10万円値上げ検討」をどう考える?

AI要約

東京大学が授業料の引き上げを検討しており、円安・物価高騰などが影響している。その一方で学生や現役東大生から反発の声が上がっており、教育環境や学生の負担、経済的理由などが懸念されている。

現役東大生の意見は様々で、値上げについて冷静な分析や貧困層の入学可能性などに異を唱える声もある。一方で、教育に金を出し渋る国に未来はないとの警鐘も鳴らされている。

現役東大生に聞いてみた「学費10万円値上げ検討」をどう考える?

 値上げの波はここにも及ぶのか──。

 東京大学が授業料の引き上げを検討している。現在は年53万5800円で、文部科学省の省令では最大約10万円の増額が可能だ。教育環境の充実化で国際競争力を向上させたい狙いがあるほか、円安・物価高や光熱費の高騰も影響している。

 当然、反発の声も上がる。東大本郷キャンパス(東京・文京区)の掲示板には「学費値上げ反対」「学生の声を聴け!」と訴える張り紙が6種類ほどあった。学生の負担が増すことや、経済的な理由で学ぶ自由が脅かされるのではないかと懸念する内容だ。

 実質賃金が24カ月連続のマイナスを記録し、家計が苦しくなる中、現役東大生は学費値上げについて、どう考えるのか。実際に聞いてみた。

 法学部の3年生は「インフレだから仕方ないんじゃないですか? 賃金と物価の好循環という視点でいうと、今はその恩恵を受ける前の段階。数カ月後には見方も変わってくるのでは」と冷静な分析だ。

 文系の大学院修士2年生は「弱い立場の学生から金を搾り取ろうとするのが理解できません」と、こう続ける。

「金を出すべきはあくまで国であり、財務省です。国立大学の法人化以降は運営費交付金が減らされ、学ぶ環境は損なわれてしまった。東大はまとめ役となり、全国の大学と連帯してもっと予算を出せと国に迫るべきです」

■「貧困層、地方出身者が東大に入りづらい構造こそ問題」

 経済学部の4年生は値上げを肯定しつつも、貧困層などに門戸が開かれていない現状に異を唱える。

「確かに金銭的な負担は問題ですが、東大生なら家庭教師のアルバイトなど、お金を稼ぐ手段はわりとある。奨学金を借りても、卒業後は高収入の仕事に就ける可能性が高く、返済の見通しがつきやすい。10万円程度の値上げなら問題ないかと。とはいえ、それは入学してからの話。今や東大生の多くは裕福な家庭の出身者で、過疎地や貧困家庭に生まれてしまえば、東大に入学するという選択肢は現実的ではなくなっている。こうした状況が再生産されてしまう格差社会を是正する方が、よっぽど重要だと思います」

 さすが東大生はいろいろ考えている。いずれにせよ、教育に金を出し渋る国に未来はない。