「十割そば」に学ぶ投資術 割高なのを知っている地元の人は手を出さない?(黒岩泰)

AI要約

友人が観光地価格の十割そばに手を出す話と、株式投資での注意事項について述べられている。

観光客やヨソ者が知らない地元の価格事情、投資信託のダブル〇〇やレバレッジ〇〇の危険性について解説。

2倍の商品に手を出す欲望やもみ合い相場でのリスク、高見山の例を挙げたアナリストの警告。

「十割そば」に学ぶ投資術 割高なのを知っている地元の人は手を出さない?(黒岩泰)

【シニアのためのマネー講座】#96

「せっかくそばの産地に来たんだから、オレは十割そばね」

 東京から来た友人のMさんがこう言い出した。

「ヤメた方がいいよ。ここのそば、十割も九割も中身は同じ。値段が高いだけ」

 そう、いわゆる観光地価格である。地元の人はそれをよく知っている。だから決して十割そばに手を出さない。

 しかし、観光客やヨソ者はそれを知らない。だから平然と十割そばを注文し、割高なものを食すのだ。

「これおいしいね」

 値段が3割高いことも知らずに……。

■投信「ダブル〇〇」に要注意

 株式の世界でも、このように「買ってはいけないもの」が存在する。それは「ダブル〇〇」「レバレッジ〇〇」という投資信託だ。

 日経平均やTOPIXなどに連動し、「その倍」動くのを目標にしている。なかには「逆方向に2倍」動く商品もあり、投資家の間ではちょっとした人気になっている。でも、これがどうしてダメなのか――。

 実は「2倍」と思っていても、そのうち「1.8倍」とか「1.5倍」とかになってしまうケースが多いのだ。

 上がるときは少ししか上がらず、下がるときは思いっきり下がる--そんなヘンな動きをするのである。これでは何をやっているか分からない。

 理由はちょっと難しいので割愛するが、簡単にいえば、相場がもみ合いになったとき、「上がったら買い、下がったら売り」とやってしまう習性が要因となっている。

 NISAのときに出てきた「ドルコスト平均法」の逆みたいなことをやっているのだ。これでは儲かるわけがない。

 だから、この「ダブル〇〇」的な投資信託は長く持てば持つほど、ドンドン不利になっていく。

 一方的に動く相場だったらよいのだが、そんな相場はめったにない。もみ合い相場が続いているうちに、ジリ貧になっていくのである。

 そもそも2倍の商品に手を出すこと自体、欲の皮が突っ張っている--その仕打ちを必ず食らうということなのだ。

 だからシニアもよくご存じのあの高見山が「2倍~! 2倍~!」と言い出したとしても、決して手を出してはいけない。

 仮に綿の量が2倍になっても、寝心地は2倍にはならない。むしろ損失が大きくなり、寝つきの悪さが2倍になってしまうだろう。ぜんぜん「大丈夫ネー」ではないのである。

(黒岩泰/株式アナリスト)